昔の恋人がアルツハイマーになり、施設に入ったことを知った主人公。
自分もアルツハイマーのフリ(演技)をして同じ施設に入るが、彼女はすっかり彼のことを忘れていた…。
タイトルから予想できるとおり、コミカルでロマンティックな "感動の" ラブストーリー。
でも、だんだん腹が立ってくる。このじいちゃんに。
昔の恋人を追って、アルツハイマーのフリをして施設に入る時点でそうとうヤバいでしょ。
亡くなった妻の話は出てこない。
元恋人リリィへの熱い想いばかり。
奥さんのことはぜんぜん愛してなかったんだ??
奥さんが可哀想すぎる。
自分の想いだけじゃなくて、元恋人リリィの気持ちや、その家庭のこと、彼女が43年間自分とは違う道を歩んできたこと、いまの彼女が昔の彼女と同じではないことは、考えなかったのか??
そもそも不倫だし。
懐かしさと会いたさで勢い余って施設まで行ってしまったのはまあともかくとして…
ただ彼女の側にいるだけでも、寄り添うだけでもいいのでは?
過去と現在を、無理につなげようとしなくてもいいのでは?
「自分のことをなんとかして思い出してほしい」というエゴでないのなら。
感動のシーンを見せて、観客を泣かせたかっただけの映画に見えてしまった。
43年間いなかったのに、突然出てきておいしいとこだけ持ってこうなんて、虫が良すぎる。
旦那さんは、長い間彼女と苦楽を共にしてきて、介護もしてきたのですよ。
かき乱すだけかき乱して、結局何しに行ったのかわからない。
そしてリリィの夫は…
んなわけないでしょ。
もしも、たとえばの話…
彼女がいまの夫と深く愛し合っていること、自分がいなくても幸せな人生を歩んできたことを知り、安堵とともに自分が過去の人であることを自覚。
彼女と旦那さんとの若き日の思い出を思い出させるのに一役買って、自分は黙って去る。
そして自分自身も、妻と過ごした日々が何より幸せだったことを思い出す。
…という話だったとしたら、好きだったと思う。