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一寸先は闇のHKのレビュー・感想・評価

一寸先は闇(1971年製作の映画)
3.7
CS放送のクロード・シャブロル監督特集の後半です。
原題は仏語で“Juste avant la nuit”(英題:Just Before Nightfall)
なるほど、“暗くなる直前”“夕暮れ前”だからこの邦題なのか。

裕福で幸せな家庭を持つ主人公は家族ぐるみで付き合いのある親友の妻と愛人関係となり密会、倒錯プレイのあげく親友の妻を絞め殺してしまいます。ここまでが序盤。
この後、自分の犯行を妻や親友、そして警察からいかに隠しおおせるかというサスペンスかと思いきや・・・

普通、キレモノの刑事なんかが出てきてネチネチと主人公を追い詰めたりするのを想像してしまいますが、逆にダ~レも気づかない、疑わない。
主人公を取り巻く人たちの予想外の反応に、観ているこちらも主人公と同じく拍子抜け。
本当にこれでいいの?と不安になってきた主人公は・・・

一見シンプルで、ありがちなストーリーだと思わせといて、え?そっち?と飽きさせません。
やっぱりこの監督、一筋縄ではいかない妙な魅力があります。
こうなると、いったい誰が悪くて、誰が悪くないのか、そして正義って何?

主演はドロンやベルモンドの映画の脇役でよく見かけた口が逆への字のミシェル・ブーケ。
『トト・ザ・ヒーロー』では年を取ってからの主人公を演じてましたが、堂々主役を見たのははたぶん今回が初めて。
主人公の妻役は当時の監督の妻であり常連のステファーヌ・オードラン。(この人、美人の私の従妹に似てます。関係ないですけど)
主人公の親友はやはりドロン、ベルモンドの映画でよく見かけるフランソワ・ペリエ。

本作は原作モノで、実は成瀬巳喜男が先に映画化(『女の中にいる他人』)してるとか。
そちらも観てみたくなりました。

ところで、物語のターニング・ポイントとも言える箇所でネズミ捕りが出てきますが、これが「トム&ジェリー」で何度もお目にかかった、あの触れるとパチン!と挟むヤツ。
アニメと同じくチーズを乗っけていて、実写では初めて見たので妙に感動。
実際にネズミが引っ掛かるシーンは、今ならどこからかクレームがきそうですね。
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