アンメルツヨーコヨーコ

オルジャスの白い馬のアンメルツヨーコヨーコのレビュー・感想・評価

オルジャスの白い馬(2019年製作の映画)
4.8
森山未來が呼び水となり、公開されたら絶対に観に行くと決めていたので早々に実行。「いいものに違いない」というさして根拠のない確信や、漠とした期待はやはり裏切られず、終始息を呑むように画面に見入ることができた。

カザフスタンという土地、生活様式、風景、時間の流れ方などと見事に馴染んだ、感情表現や言葉が極限までに省かれた物語世界。かと言って、虚無的でもない。最小限に抑えられた会話、役者の表情や声色や口調などで心理描写は充分に行われていた。

森山未來はやっぱり素晴らしかった。「器用」の一言で片付けてしまうのではつまらない。生来の身体や言語を媒介する表現者としてのセンスの高さが遺憾なく発揮されていた。いい意味で画面から浮いてない。カザフスタンの風景と人々に埋もれていた。彼が森山未來であることを忘れそうになるほど、カザフスタン語を滑らかに発していたようにも聞こえた。もちろんカザフスタン語を私は一切知らないのだけど。何となく。

1時間21分という上映時間も、必要かつ充分に凝縮された、丁度いい尺に感じられた。

物語が終る頃の、姿を見せずして醸し出される存在感。あれをしたのは彼だな、と顔を見なくてもわかる。

いい作品にまた出逢えて嬉しい。