てつこてつ

ヴィスコンティの肖像のてつこてつのレビュー・感想・評価

ヴィスコンティの肖像(1976年製作の映画)
3.2
74分と多少短めではあり、駆け足感はあるものの、イタリアが生んだ巨匠ヴィスコンティの生涯を本人や、若かりし頃のアラン・ドロン、マルチェロ・マストロヤンニ、バート・ランカスターといった豪華な出演俳優の当時のインタビュー映像と共に振り返るこのドキュメンタリー作品は、ヴィスコンティファンなら一見の価値あり。

ミラノの貴族の御曹司だったヴィスコンティが映画の世界に飛び込んだ過程、後に彼の代表作の一つともなる「ベニスに死す」の原作者であるドイツ人作家トマス・マンとの国境を越えた交流が興味深い。

「ベニスに死す」で主人公を魅了する美少年の母親役を演じたシルヴァーノ・マンガーナにヴィスコンティが亡き母親の姿を投影していたとは初耳。「山猫」の舞台となったシチリア島に存在する実際の貴族の邸宅の風景、何千本もの蝋燭を灯したので撮影中に俳優陣にロウが垂れ掛かって大変だったという裏話などは、作品のファンとしては垂涎もの。

デカダンスの象徴と呼ばれるこの巨匠が、「若者のすべて」と並んで、民衆を突き放した視線で制作したと紹介さている「地獄に堕ちた勇者ども」は未見なので、これは是非とも視聴せねば!
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