LalaーMukuーMerry

恐竜が教えてくれたことのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

恐竜が教えてくれたこと(2019年製作の映画)
4.5
邦画タイトルから、化石探しにのめり込んだ少年の話かと思ったら大間違い。原題はMy Extraordinary Summer with Tess(テスと僕の特別な夏)、12歳の少年サムと少女テスとの夏休みの出来事(小さな恋の始まりのきっかけ)を描いたお話。
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家族で島にバカンスにやってきたサムと、ちょっとおかしな行動をする島の少女テスとの出会い。最初は不自然で変な感じのエピソードが続くも、中盤でわかる彼女の秘密計画のわけを知って、なるほどそういうことかと納得。それから計画を手伝うサムと、二人の関係に一気に引き込まれていきます。彼女の行動にいちいち戸惑い、喜んでは落胆し、振り回されるサムの心情にピッタリマッチしたBGMがいい。浮き沈みの演出もうまい。周りの大人たちもなかなか味がある。シンプルだけど、よくできてると思う。
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児童文学は往々にして大人の心にこそ強く響く。みずみずしい感性の少年が、自分の気持ちを自覚する、そして人の気持ちを想像することができるようになる。友情とも恋愛ともいえない微妙な気持ち。老人の話す深い言葉「思い出をたくさん作るんだ、手遅れになる前にな」 それを素直に吸収し自ら行動しはじめる若いこころ。当たり前と思っていた家族が実はとても大切なものだったと気づく・・・家族の他の大切な人のためにも頑張る・・・ 

誰にも起きるささやかなこと=大人の心に成長する過程がいきいきと描かれた、とてもとてもさわやかなお話。めっちゃよかった! 
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「今はまだ少ないけど、未来は思い出で一杯だ」
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(おまけ)舞台はオランダのテルスへリング島という島、この島の住民たちは海から流れ着いた物すべてを大切に使うという伝統がある。難破船から取り出したマストでほとんどの農場や納屋が作られていたという。作品に登場する爺さんは、漂着物収集が趣味の変人なのではなく、この島の伝統を受け継いできた人のようですね。