アキラナウェイ

リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.6
彼こそRock'n'roll star.

UKバンドに陶酔した90年代。
僕の心を熱くしたoasis。

兄ノエル・ギャラガーが作った楽曲を弟リアムが歌う。マンチェスター出身の労働者階級のブリティッシュ・ロック・バンドは、瞬く間に世界的に唯一無二の存在へと駆け上る。

兄弟喧嘩は日常茶飯事。
ライブの中断、ツアーの取り止め。
oasisの音楽活動に、彼らの兄弟喧嘩は頻繁に聴こえてくる当たり前のニュースだった。

神戸のワールド記念ホールでoasisのライブに行った時も、頼むから喧嘩しないでくれって祈っていたのを思い出す。

2009年。また彼らが喧嘩したって。
oasis解散だって。
いやいや、直ぐに仲直りするでしょう?
再結成するでしょう?

その夢はいまだ果たせぬまま。

ライブの中止を告げるアナウンス。沸き起こる観客の悲鳴。ノエルはoasisを去り、リアムはノエル以外のメンバーで新バンドとなるビーディ・アイを結成。2014年まで活動を続けるも解散。2017年にソロデビューを迎え、現在に至る、リアムの10年を追ったドキュメンタリー。

傍若無人。
ビッグマウス。
気に食わないヤツはクソ呼ばわり。
ステージでは後ろ手に仁王立ちのスタイル。

最低なのに、最高。

もっと強いと思っていた。
彼が語る言葉通り、向かう所敵なしだと思っていた。

そんな彼が、挫折し、苦悩した時間があったなんて。

長兄ポール、元oasisのメンバーであるボーンヘッド、母ペギー、息子達であるジーンとレノン(勿論ジョン・レノンに因んで命名)、現在のパートナーであるデビーらが語り、リアムの素顔が浮き彫りになっていく。

リアムが良き父になっていた事。
朝起きてジョギングを欠かさない事。

僕の知らないリアムが映し出される。

リアム目線で語られる作品故に、ノエルが悪者になっているけど、それが真実ではない事もわかっている。ノエルにはノエルの言い分がある。

観賞後に、何より悲しくなったのは、血を分けた兄弟が10年以上も顔を合わせていないでいる現実。

この作品にoasisの楽曲使用をノエルが認める筈もない。リアムの楽曲も勿論素晴らしいけど、僕はそれでも、またいつか兄弟が肩を並べて、「Don't Look Back In Anger」や「Wonderwall」を歌ってくれる日を待っている。