ホイットモア大統領

La nuit de la mort! (原題)のホイットモア大統領のレビュー・感想・評価

La nuit de la mort! (原題)(1980年製作の映画)
4.3
独り占めしたら罰があたるよ。

フランス原産のカニバルネ・ソーヴィニヨン・ホラー。

老人ホームで働き始めたマルティーヌ。最初こそ風変わりな老人たちと厳格なオーナーに戸惑いを示すも、先輩のニコルの助けを借りながら仕事をこなしていく。
ある日、あっさりと受け入れられた外出許可から帰ってくるとニコルの姿がない。聞くと夜のうちにホームを去ったらしいが…

70〜80年代の仏製ホラーというのはあまりイメージがないけど、本作は『殺戮謝肉祭』に続く本国2本目のスプラッター作品らしい。そんなレアな1本。肉だけに。

残酷描写は序盤と終盤にしかないけど、とりわけ2ヶ月かけて食われた死体の特殊メイクが白眉!買ったBlu-rayがスリーブケース付で、中身を出すとその写真がデカデカと印刷されていた時は嫌がらせかと思った。

恐らく『サスペリア』の大ヒットに影響を受けたであろうことは、スキャットが響く不気味なスコアに、魔女の如きボス婆の目的と古びた館、主人公が赤髪の美女というところからも想像に難くない。さらにそこに『悪魔のいけにえ』的狂人&食人要素も併せた怪作!!

とにかく、出てくる人出てくる人、皆ヤバい!!!

セクハラまがいのちょっかいを出しまくる爺。寝れないからと急にベッドに入ってきて肌をスリスリしてくる爺。人形と恋愛ごっこをしてたかと思ったら急に癇癪を起こして動かなくなる召使い。

中でもムッシュ・ジュールスが断トツにヤバい。独り占め、ダメ、絶対!と説教されて鞭打ちの刑にまで処されたのに、また我慢できなくて目潰されるとかほんとヤバい。鞭打たれる時のドM声とか、許された途端ボス婆の脚にめちゃキスするのとか、もう全部ヤバい。

ちなみにディスクにはムッシュ・ジュールスが舌舐めずりしてる顔がデカデカと印刷されていて、前述の死体の写真と併せて作り手のセンスを感じる。

でも、館に着いて顔圧強めな爺婆が窓にピッタリくっついてこっちを見てたり、2階から真顔で見下ろしてたら、それだけで俺は帰るけどな。

ただ、主人公も同じぐらいヤバいんよ…

勝手に1日早く来た挙句、大きな門を見るなり「ここは刑務所?訪問者には優しくしてよね!」と召使いにキレてみたり、その脚が悪い召使いに「それは戦争で?」とか聞いたり、教養がzero!
数多の老人が窓から着替えを覗いてても「キャッ!」で済ますし、人肉食いを目撃した次のシーンで普通に寝てるし、主人公どんだけ肝が据わってんだよ!と思う。

ちなみに出演女性の内、前述の主人公含め主役級の3人は皆脱ぐ!婆も脱ぐ!!しかもその3人全員美人だし、さすがフランスや!と異国情緒に舌鼓を打ちました。

この爺婆たち、移動してくるシーンや足音を立てるシーンが一切無くて、気づいたらそこにいるという変なカット演出がなされているんだけど、それが逆に気味悪さを増長させていて素敵。
「私たちは戦士よ!戦士は団結するの!」とサラ・コナー発言をしながらも「あの娘は俺/私のものだぁー!」と衰え知らずの強欲さゆえ破滅していくのも素敵。

一つ屋根の下の狂気や、爺婆がヤバ過ぎて笑えてくるところ、オシャレなカメラワークなんかは『鮮血と恐怖のメロディ(新題:アングスト)』と通ずるような気が。