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次は何に生まれましょうかのQTakaのレビュー・感想・評価

次は何に生まれましょうか(2019年製作の映画)
3.2
野本梢監督が描く”普通”を問う物語。
娘を思うように育てられなかったかもしれない母親。
幼い子どもの姿に、不安を募らせるシングルマザー。
親と娘は、それぞれに親としての眼差しを持ち、そこに苛立つ。
どうして”普通”にできないの!
思うようにならない事の原因は何処にある?
それは、子供なのか、娘なのか、それとも私?
.
自分の事は、自分が一番見えていないし、分かっていない。
そんな時、支えてくれる人が傍らに居る。
母親と娘、そしてその子。
娘は、親の子であり、子の親である。
このシングルマザー”聡美”を演じたのは根矢涼香さん。
自分で自分をこじらせて行く、複雑な人格を絶妙に演じていたと思う。
「自分は大丈夫」と思い込ませるように、頑張って頑張って、何も出来ていない自分に向きあえない。
子供が学校や公園、家庭で見せる行動に、「どうして”普通”に出来ないの!?」と困惑する。子供に何か問題があるのかと不安に駆られる。
そんな彼女をママ友が優しく支える。
また、職場の同僚も彼女を見守りながら、重要な存在となる。
部屋の片づけも良くできていない彼女をよく見ている。
問題は、彼女自身にあるという事も見抜いている。
彼女も、横目でチラッと見るように、そんな自分に気付いている。
でも、受け入れられない彼女に、親友はビシッと告げる。
問題は、自分にあるんでしょと。
受け入れがたい事実と向き合った時、しっかりと受け止めてくれる友人の存在は重要だ。
職場で隣り合う友だちであり、公私に渡っていつも隣にいてくれる友人役は笠松七海さん。
野本監督の作品では、『アルム』で主演されていた。
この映画では、とても重要な一言を告げる役だった。
この友の存在こそが、私たちが今失いかけているものだろう。
聞き辛い事、認めたくない事を知らせてくれる存在が本当に必要だと思う。
聞きやすい事、耳障りの良い事のみを頼りにして、心地よく生きようとする社会は、レミングスのように集団自滅に向かいかねない。
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この映画で問われた”普通”がとても気になる。
昨今の世の中でも良く用いられる言葉かもしれない。
”普通”ってなんだ?
誰が決めた”普通”なんだろう?
でも、取り憑かれたように”普通”を求める。
”普通”は、我々に課された生きるための最低条件なのか。
だから、私たちは、「自分は”普通”だ」と思っているし、思いたい。
でも、どうんだろう?自分ってどうなんだ?
映画で根矢さんが演じた母親は、自分が普通だと思っていた。
何よりも、子どもを前にして、母親としてしっかり出来ていると思いたかった。
でも、母親としてよりも前に、自分を自分として認めなければいけなかった。
その事を認めさせてくれたのは、友だちだった。
イイ友を持って良かった。
みんな普通じゃないんだよね。
そんな姿を受け入れてくれる友の姿が、とても眩しかった。
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