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ユンヒへのCOLORofCINEMAのレビュー・感想・評価

ユンヒへ(2019年製作の映画)
4.5
「雪はいつ止むのかしら」
●ひたひたと雪の上にまた雪が.. と書くと吉野弘さんの詩のようだが、長い年月が経とうともユンヒ(キム・ヒエ)とジュン(中村優子)のお互いの恋しい気持ちは溶けることなく積もっていく雪のように消えることはない。そして描かれなかった部分にこそ秘めたる物語が隠されている。
●ふたりの過去は描かない、そして再会した後の会話も「久しぶりね」といった言葉が交わされたシーンで暗転する。
●この小樽運河での再会シーン。
最初、すっとすれ違った感じで少し経って立ち止まり、振り返ってじっと見つめ合うところが最高に素敵で美しかった。なにがあったのか、どのような別れがあったのか多くを語らなくても雪解けのようにじんわりと伝わってくる。
●母ユンヒとジュンの再会を画策(という割にはゆるゆるなところも可愛らしいのだが)する娘セボム。その画策による小樽旅行によってちょっとぎくしゃくしてた母との関係も近く暖かいものに変わっていく描き方も見事だ。
●「秘して語らず、しかしそこには確実にふたりを引き裂いてきた数々のできごと(偏見や因習や差別)の物語」が多くある。ユンヒとジュンだけではなくリョウコ(瀧内公美)の物語や、あるいは仄かにしかわからなかったがユンヒの伯母マサコ(木野花)の物語も…
●本作を覆う、あたたかい眼差しはそのまま新しい世代でもあるセボムが母ユンヒへ向けたカメラの視線でもある。ラストのユンヒがみせる微笑みが、また美しい。
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