岩井俊二の『ラブレター』(中山美穂の絶頂期!)に触発されたというが、これはまた静かだが実にしみじみとした映画だった。
ポスター写真から勝手に『ブロークバック・マウンテン』(アン・リー監督)のような、激しくも悲しい、同性どうしの恋愛物語を予想していたが、いい意味で裏切られた。
叫んだり走ったりという、今で言う「エモい」描写はまったくなくとも、相手に対する強い思いや複雑な感情は伝わってくる。
切ない。
女性進出が遅れていると言われている韓国(日本はもっとひどい)において、同性愛はおろかマイノリティである女性同士の恋愛は、治療の対象で、だからこそ優秀だったであろう主人公が大学進学もできず、今に至るという事実。日本でも「性同一障害」という名なので同様なのだが。
手紙の語りという手段を用いて恋愛を語り、母娘、父娘、おばと姪に元夫との関係などさまざまな関係性をも描いた映画として、あくまでも静かだが強く印象に残る。