中年女性の、それもレズビアンのロールモデルはとても少ない。
情緒溢れるピアノの旋律がユンヒらの凍えた心を溶かしてくれるかのような優しさ。
ラブストーリーの主役と言えば20代以下の男女が多い中、この映画の主人公は中高年の女性。そして、労働者階級の。
降りやまない雪が街中を覆う冬の小樽に、ジュンとユンヒがお互いに宛てた手紙がナレーションで折り重なる。
白い孤独が非言語コミュニケーションによって少しずつ解きほぐされていく過程がハートフルで幾らかエモーショナルな部分もあって、全体的には何も足さないし何も引かない物語ではあるけれど、エイジズムの否定やユンヒたちの抱えた自罰的な感情を最終的に(ある程度の)自己肯定に導いていく脚本は丁寧で温かい。
岩井俊二監督の『Love Letter』にインスパイアされたということで、同監督の映画が好きな人は似たような空気感が楽しめるし、そうでなくても興味があるなら損得の存在しない地平へ連れて行ってくれる映画。
好き。