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ユンヒへのkuuのレビュー・感想・評価

ユンヒへ(2019年製作の映画)
3.8
『ユンヒへ』
原題 윤희에게/Moonlit Winter
映倫区分 G
製作年 2019年。上映時間 105分。
北海道・小樽の美しい冬景色を背景に、2人の女性が心の奥に封じてきた恋の記憶をミステリアスに紡いだラブストーリー。
主人公ユンヒをキム・ヒエ、ジュンを中村優子(今小生が暮らしてる町出身らしい。近所の人が云ってた)、ユンヒの娘セボムをキム・ソヘが演じた。
監督は本作が長編2作目となる新鋭イム・デヒョン。

韓国の地方都市で高校生の娘と暮らすシングルマザーのユンヒの元に、小樽で暮らす友人ジュンから1通の手紙が届く。
20年以上も連絡を絶っていたユンヒとジュンには、互いの家族にも明かしていない秘密があった。
手紙を盗み見てしまったユンヒの娘セボムは、そこに自分の知らない母の姿を見つけ、ジュンに会うことを決意。
ユンヒはセボムに強引に誘われ、小樽へと旅立つ。。。

今作品の冒頭は、冬の雪景色が駆け抜ける電車の車窓をカメラが縁取る、後のシーンの断片から始まる。
この断片は、ユンヒとセボムの日本への旅を示す、かなり短い後続シーンの一部を構成している。
しかし、この初期段階では知る由もないが、それでもそれ自体が旅を指し示してるし、ジュンの叔母が手紙を見つけて投函し、セボムが郵便受けでそれを発見するという、続く2つのシーンと合わせると、物語の全体的な動きを最初から暗示している。
しかし、今作品は、主要登場人物全員の理解とカタルシスに向かう心理的な旅であり、実際の旅そのものは、単に心の動きの一部として、付随的に必要なものやと思う。
そのため、表面的にはかなり単純な物語に見えるかもしれないけど、(特に)ユンヒがジュンとの過去の関係と、それ以来、彼女を満たしてきた痛み、罪悪感、羞恥心(その多くは他人の色眼鏡からくる態度や認識の結果生じたもの)を和解させようとする個人的な旅路の中に、手に取るような感情や視聴者の理解があり、それが今作品に真の重要な深みを与え、単純化されたものから遠ざけている。
イム・デヒョン監督は今作品を通して、視覚的象徴主義と物語的寓意を用いている。
例えば、ユンヒの場合、少なくともジュンとの絆を取り戻すために日本へ行きたいと思うだけでなく、行く必要があることを悟るための心の一歩一歩が、列車の通過とともに描かれる。
彼女が憤慨しながら、そして(その後の彼女の表情から)自分の決断に満足しそうになりながら工場から立ち去るとき、彼女の背後の遠くを列車が疾走する。
このシンボリズムは、特に使用される回数が多いため、あからさますぎると感じなくはない。
しかし、ほとんどの部分において十分に機能していた。
個人的な見解やと、このシンボリズムは、物語自体からすでに学んでいることを伝える以上のことはしておらず、繰り返し使用されるのは、単なるバーチャルな視覚的説明でしかないかな。
ユンヒとジュンを一緒に考えれば(もちろん現実では別々なので、また、テーマ的にも)、はるかに微妙で価値のある象徴性が明らかになると思う。
ユンヒは冒頭から、感情的な意味でほとんどすべてから切り離された存在として描かれている。
セボムに何のために生きてんのか?と聞かれて、
彼女は『娘のために生きている』と答えたが、少なくとも、彼女が持つことができた、そして愛することができた他のすべてが奪われてしまったからだと感じずにはいられなかった。
若い頃、彼女は大学進学の希望を捨て、弟が大学に通うためにお金を稼ぐために就職せざるを得なかった。
ジュンとの関係が両親に発覚したとき、彼女は精神科の治療を受けることを余儀なくされた(これらはどちらも、歴史的に家父長的な女性の社会的地位に対する考え方と、同性間の関係に対する考え方によるもの)。
なら、セボムはどうか?
ユンヒに浴びせる辛辣な言葉もあるが(冷酷とさえ云えるかな)、彼女が心から尊敬する女性との絆を深め、心から関わり、理解し、理解されたいという願望は、次第に無視できなくなっていく。。。
ユンヒの兄、セボムの伯父に『父より母に似ている』とセボムは云われたときの、彼女のはにかんだ笑顔を見ればわかる。
今作品では誰もが、否定的な反応を恐れて、誰かに何かを隠している。
しかし、セボムの母親を理解したいという願望が、何よりも肯定的で重要な隠された意図につながる。
つまり、セボムが母親を説得してセボムを日本に連れて行くこと。
彼女の少々狡猾な計画は、最終的にそれまで隠されていたものすべてのヴェールを取り去り、すべての人のために、少なくともカタルシスが起こる可能性を最終的に可能にする。
これほど今作品にとって重要なことはない。
今作品は、表面的にはかなり単純化された物語に見える、しかし、事実上すべてのシーンに浸透している感情的な深みこそが、今作品を最終的に非常に価値のあるものにしていると思います。

   『ユンヒへ』を鑑賞し
         by. KUUことGEORGE
胸に積もった想い
まだ溶かすことができないまま
あなたを想う
ただ笑い合った日々
忘れたいはずの
罪悪感と羞恥心
満たしてきた心痛み
懐かしさが強くなるなんて
心の痛みはまだ散らばったまま
解決しないまま 
時は過ぎていったのです
集めてきた二人のかけらを組み合わせて
あなたのことを想う
云わなければならなかった
別れの言葉の理由を探して
毎日答えを探し続けてます
未来があるから
伝えようとしても
あの日のあなたに
ただそばにいたいと口に出して
云うことはできません
これが正しいことなのかわからない
心に空いた穴がすべてではないし
雪のように溶けてしまうから
愛しているだけが私たちを
繋ぎ止める手段ではないことに気づきました
誰かの愛の目印なんていらない
でも、この愛の行方の答えはまだ見つからない
桜の花が咲く頃には
これでいいんだと忘れていてもいいのでしょうか
白く息を吐き出すように
さようならの代わりになるものを探していたのだろうけど
わたしは誰よりもあなたの幸せを願う人間でありたいから
あなたの幸せを誰よりも願う人でいたい
だから、さようならの理由をずっと探していたんです
雪解けとともに咲く花のように
いつかまたどこかでまた会えたら
わたしの知らない笑顔を見せて欲しい
kuu

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