ことりちゃん

グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇のことりちゃんのレビュー・感想・評価

4.5
役者さん達が良い。
めちゃくちゃ良い。
脇役の一人ひとりに至るまで細やかに考え尽くされた配役だと感じました。それぐらいに良い。
太宰治の未完の作品で、ケラリーノ・サンドロヴィッチが舞台の為に完成させたんですよね。
どこまで太宰が書き上げて居たのか分からないですが、
2年後からがオリジナルで、本当は原作の時点で田島が亡くなり、女達の集いまでしか書き上げられていなかったなら納得です。

そもそも大まかに見れば時代錯誤な男視点のお話ですし、大きな盛り上がりがある訳でも無いので好みは別れると思いますが、特にその2年後から更に好みが別れそうな気がします。
私は好きでした。

小池栄子さんがこんなにも強くて美しい人だと思わなかった。愛人役の女優さんたちを見た時、その愛人を引き下がらせる程の美女役に彼女は正解なのか?と半信半疑だったのですが鑑賞して彼女しかいなかったと思いました。ただセクシーなだけとか、童顔で可愛いとかそれではダメなんですね。強くて、美しくて、あとあのモガスタイルを完璧に着こなせなくちゃダメ。小池さんの素晴らしいプロポーションと高い鼻が作る美しい横顔、そして元から秘めている強さがなければこの美しいキヌ子は成り立たなかったと思います。

そしてやっぱり、やっぱり贔屓目と自覚はしていても大泉洋さんは本当に最高としか言えない。
映画を見るまで、女にだらしない男とか、そんな男に弱い女とか、古臭いし時代錯誤だし頭悪すぎて着いていけなーいって思ってました。
確かに時代錯誤だし良い事だとは今でも思わない。
でも、人間って完璧じゃなくって、綺麗な女の人に言い寄られたら弱くて優柔不断で断り切れない男だって戦後にも居るだろうし、あんなに頼りなくてダメででも優しくてどこか色気のある男が居たら母性に揺さぶられる女も居るだろうし、なんかそういうもんかなって思わされちゃいます。
それぐらい出て来る役者さんのお芝居が上手いし、押し付けがましくない。
キヌ子をみっともなく襲おうとして放り出されてボロボロになりながら電柱を登る姿から、ウエディングドレス姿の彼女と窓越しに手を合わせてグッドバイって言うところ(1番好きなシーン)まで振り幅が凄すぎるのにどっちも違和感が無い。何度見てもこの人は凄い役者さんだなあと思います。

お芝居だけに全ての点数をあげても良い、そんな映画でした。

ただひとつだけ、
やっぱりこのお芝居は同じ布陣で舞台で観たかったな。

そして一瞬だったけど着物姿で腕を組んで現れた大泉洋、最高だった。眼福。