kkkのk太郎

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

IMF所属の諜報員、イーサン・ハントとその仲間たちの活躍を描いたスパイ・アクション『ミッション:インポッシブル』シリーズの第7作目にして、『デッドレゴニング』二部作の前編。

世界中の情報にアクセスしそれを改竄する能力のあるA.I.「エンティティ」の暴走を止めるため、イーサン・ハントはその制御キーを求めて世界中を駆け回る…。

◯キャスト
イーサン・ハント…トム・クルーズ(兼製作)。
ベンジー・ダン…サイモン・ペッグ。
イルサ・ファウスト…レベッカ・ファーガソン。
ホワイト・ウィドウ…ヴァネッサ・カービー。

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』…。
長ったらしすぎるだろっ!!💦とついついツッコミたくなってしまう本作。

そもそも「デッドレコニング」って何やねん、と思っていたら作中で説明されましたね。アメリカ人でも馴染みのない言葉なのかな?
「デッドレコニング」=推測航法。GPSなどの電波が届かないところに差し掛かった際に、最後に観測された位置と走行方向・速度などから現在の位置を算出する航法のこと。ふーん。
デジタル機器の使用が封じられ、五体をフル活用したアナクロ戦術で敵と立ち向かうことになるイーサンと、CG全盛期でありながらも、あえて命懸けのスタントを繰り返し時代を切り拓いていくトム・クルーズ。その両者を象徴するかのようなタイトル…だが、多分一番の決め手は語感の良さでしょうね。「デッド」も「レゴニング」もなんか怖くて凄そうな響きがするもん。

トム・クルーズ主催/主演のビックリ人間コンテストと化して久しい『M:I』シリーズ。7作目でもその狂気は健在。
公開前から繰り返し宣伝されていた、断崖絶壁からのバイクジャンプアクション🏍️💨YouTubeでこのメイキングを観ることが出来るが、そのロケーション、スケール、危険度、そして練習回数まで、何もかもが規格外。
このスタント有りきで脚本を作り始めたという噂もあるが、それも然もありなんと思わせるトンデモスタントでした。お見事👏

チンクエチェントでのカーチェイスや狭い路地でのジャッキー風バトルなど、面白アクションシーンは沢山あるが、やはりバイクスタントからシームレスに展開される、オリエント急行を用いたクライマックスには度肝を抜かれる。
『1』を思い出させる列車アクションだが、そのスケール感&臨場感は格段にスケールアップ。
列車の上でのタイマンバトル、映画やアニメで何万回と見てきたような展開だが、本作のそれは他のものとは質が違う。だって本当にやってんだもん!正気かっ!?💦
初めはCGかと思っていた観客も、トムの顔の歪みや髪の乱れなどから「これはマジでやってんな…」と途中で気付くだろう。一度それに気付いてからはもう驚きの連続。下手すりゃ死ぬほどの難スタントがポンポン出てくるんだから、これはもう気が狂っているとしか思えない。
鑑賞後メイキングを観て知ったのだが、この撮影のために本物の列車を作り、それを用いて演者にアクションをさせたのだそう。列車が崖から落ちるという展開もCGではなく、その列車を谷底に突き落として撮影したというのだから驚嘆させられる。何から何まで規格外の映画である。
これがたった2000円で観られるなんて、なんだか制作陣に申し訳がないような気がしてくる。本当にありがとうございます!😭

次々と落下する車両を登りながら、それぞれの車内で起こるアクシデントに対応していく、というのもベタな展開ではあるが、食堂車では炎に巻かれたりピアノのある車両ではその落下をギリギリで避けたりと、とにかくアイデアが満載で観ていて飽きない。
王道展開を真っ向からやり切る、それこそが一番強いんだということを本作から教えられた。

アクションの釣瓶打ちには度肝を抜かれるが、その反面ストーリーは期待を下回る。まぁ元々『M:I』シリーズにストーリーを求めてはいないんだけど、それにしたってもう少し何とかならんかったんか、という気はする。
今回の敵はAIという実体の無い存在。…なんだけど、それが何か効果的に使われているのかというとそんなことは全くない。なんかヤバいやつがイーサンを狙い、なんか知らんがアメリカからも命を狙われ、イーサン一味が孤立無縁の戦いを強いられるという、いつも通りのパターン。うーんマンネリ。

まぁこれは『水戸黄門』みたいなもんで、観客もこのマンネリを楽しんでいるんだからそれはそれで良いんだけど、問題はすごくシンプルな物語なはずなのに無駄にガチャガチャしていると感じてしまうところ。
2本あるAIの制御キー、それを悪の組織と奪い合う。しかし、その事情を知らない峰不二子的なキャラが介入し、事態は思わぬ方向に…。
基本はこの型なわけで、この上なくシンプル。その筈なのに、ホワイト・ウィドウが絡んできたあたりからなんかよくわからん感じになってきてしまう。
今誰が鍵を持っているのか、鍵を狙っているのは誰なのか、何のために鍵を狙うのか、どこに向かっているのか、そのあたりのことがなんかぼんやりしていて観ていて混乱してしまった。
頭が混乱しているから、とんでもないアクションが展開していても頭の片隅にそのことがチラついてどこか乗り切れない。
小難しいストーリーなんて誰も求めてないんだから、それこそスタントと同じくらい思い切りの良い大体かつシンプルな物語で勝負して欲しかった。

正直言うと、前作『フォールアウト』(2018)の方が好みだし、スタントも素晴らしかったとはいえ『ゴースト・プロトコル』(2011)のブルジュ・ハリファ登りの緊張感は超えてこなかった。
IMFのメンバー構成も真新しさが少なく、またイーサン一人に頼り切りになっているところは気になる。ルパンに対する次元のような存在が欲しいところ。ジェレミー・レナーが演じるウィリアム・ブラントがカムバックすればこの問題点は解消されると思うのだが、これは難しいのかなぁ…😓

まぁこれらは『M:I』シリーズ全作品付き合ってきているからこそ出てくる一種のわがままみたいなもので、本作は単品のアクション映画としてはこの上ない出来だと思います。
上映前の映像でトム・クルーズも言っていたけど、これは劇場で観る価値のある映画。特に理由もなしに本作を配信待ちするなんてバカバカしいこと、絶対にしてはいけませんっ!!
映画館に行ってイーサン・ハントの狂人っぷりを見届けましょう♪😆

※黄色いフィアット500の登場に、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)が頭をよぎった観客は多かったことでしょう。
生粋の『ルパン』ファンの自分としては、『カリ城』よりはむしろ『風魔一族の陰謀』(1987)の方を思い出した。『風魔』では飛騨の古い街並みをルパン一味がフィアットで爆走するのだが、本作でのカーチェイスは確実にこの作品から影響を受けていると思われる。

実は本作、『ルパン』以外にも日本アニメ作品からの引用だと思われるところがちらほらと見受けられる。
冒頭、ハッキングにより潜水艦のゴーストと相対することになるという展開は『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993)のスクランブルシーンを思わせるし、空港でのリアルタイムハッキングによるステルスというのは『攻殻機動隊』シリーズ、特にテレビアニメ版の『STAND ALONE COMPLEX』(2002〜2003)を思い出させる。
もしかしてトム・クルーズorクリストファー・マッカリー監督ってアニメオタク?

まぁ何にせよ、ハリウッド大作が今やっていることを30〜40年も前に色々やっていたミヤザキサマやオシイサンはやはりすごいのだ。
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