櫻イミト

モレルの発明の櫻イミトのレビュー・感想・評価

モレルの発明(1974年製作の映画)
3.5
「去年マリエンバードで」の元ネタである幻想SF小説「モレルの発明」の映画化。日本では殆ど知られていないが、アンナ・カリーナの美を封じ込めたとも言われる作品。輸入DVDで鑑賞。

絶海を小舟で漂い孤島に辿り着いた男は、さ迷ったあげくにバウハウス調の大きな館を発見する。恐る恐る入ってみるがガランとして人の気配はない。水道を見つけ蛇口をひねってみたものの水が出ず、元栓を探しているうちに機械室を見つけスイッチを入れる。ようやく水を得たところで突然、館内に大きな機械音が鳴り響き急いで海岸へと脱出する。翌朝、男はジャズの音色で目を覚ます。聞こえてくる崖上に目をやると、そこでは着飾った複数組の男女がダンスを踊っていた。見つからないように近づいていく男。人影に気づき身を隠して覗いた先には、ひとり読書をする美しい女性フォスティーヌ(アンナ・カリーナ)がいた
※映画はここまで32分間ナレーションもセリフも無し。

男は島の秘密を探るべく再び館に忍び込み、ついに驚くべき真実を突き止める。館の主モレルがある画期的な発明をし、島の人々を支配していたのだ。ジョセフィーヌへの恋が芽生えていた男にとってそれは絶望の始まりだった。。。

この発明の内容を知って、難解な「去年マリエンバードで」の解釈を大いに進めることができた。今作のジャンルはSFだが、テーマは実存主義なのだ。

“モレル”という名前はH・Gウエルズ「モロー博士の島」へのオマージュとの事。様々に映画化された「モロー博士の島」だが、どれも原作とはラストが異なっている。そして今作もラストは原作と異なっている。

さて、今作でのアンナ・カリーナは1920年代のモダン・ファッションを次々と披露していて(バウハウス調の館と合わせている)まさに美を極めた感があった。衣裳は「気狂いピエロ」や「中国女」、アントニオーニの「赤い砂漠」などを担当したジット・マグリーニ。アンナのスタイリング「パンドラの箱」で有名な1920年代の女優ルイーズ・ブルックスをモデルにしている。
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