牛猫

海山 たけのおとの牛猫のレビュー・感想・評価

海山 たけのおと(2019年製作の映画)
3.5
アメリカ人尺八奏者ジョン・海山・ネプチューンの半生を描いたドキュメンタリー。

尺八といえば、竹を割って作る笛のような楽器で、渋みと深みのある落ち着いた音色が虚無僧の姿に絶妙にマッチしていると思ってた。楽器自体のビジュアルや音色はすぐにイメージできるけど、日本人でもメジャーな楽器に比べると馴染みの薄い部類に入るだろうし、実際に吹いたことのある人はもっと少ないであろうし、比較的敷居の高いお堅い楽器といった感じだろう。そんな日本古来の伝統芸能的な側面を持つ尺八の世界に外国人が参入するとなったら、その苦労は想像を絶する。
努力や演奏技術は認められても、賞やコンクールで日本人より上にいくことは許されない。そんな中でも決して腐らず、尺八とジャズのコラボや独自の音楽を開拓して自分の世界を作り上げていく。このバイタリティに恐れ入った。
国や文化の違いがあっても、好きという気持ちがあればどんなことでも乗り越えられるのだと思わせられた。
あとこの人の人柄が魅力的だと思った。
演奏会やコンサートでの軽妙なトークも楽しかったし、師匠と再会して当時を振り返るときの穏やかな眼差しも素敵だった。

外国人の尺八奏者のことをサーカスの動物だと自嘲気味に言っていたけれど、肝心の演奏を聞いてもらえず、物珍しさだけで取り上げられてしまうのは不本意だっただろうし、悔しかっただろうけど、日本人以上に尺八のことを勉強して、練習して、自分で作って調律までしてしまう。突き詰めるところを徹底して突き詰める。その生き様がかっこいい。

新しいことをやる。パイオニアになることの偉大さや、カッコ良さが詰まった、勇気をもらえるドキュメンタリーだった。
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