こなつ

コリーニ事件のこなつのレビュー・感想・評価

コリーニ事件(2019年製作の映画)
4.2
世界的ベストセラーの映画化。本国ドイツでは記録的大ヒットとなった社会派法廷サスペンス。以前から観たいと思っていた作品だったが、評判通り非常に面白かった。「ピエロがお前を嘲笑う」のエリアス・ムバンクが主演。

新米弁護士カスパー・ライネンは、ある殺人事件の国選弁護人に任命される。被害者は、少年時代からの恩人だった。動機について一切口を閉ざす被告人コリーニだったが、カスパーは事件を調べるうちに戦後の歴史、自分の過去、そしてドイツ史上最大の司法スキャンダルへと発展、、想像を超える衝撃の真実に向き合うことになる。

父親が2歳の時に蒸発し、トルコ人の母に育てられていたカスパーは、経済界の大物実業家であるハンス・マイヤーに援助され、若い時はその娘ヨハンナとも付き合っていた。ある日ハンス・マイヤーがコリーニというイタリア人に、ホテルのスイートルームで殺害される。3ヶ月前に弁護士になったばかりのカスパーにとって、これが被告側弁護として初めて手掛ける大事件だった。

最初は頼りなく見えた若き新米弁護士カスパーだったが、コリーニの故郷であるイタリアのモンテカティーニまで行って真相を突き止めようと諦めない。熱く闘うその姿が頼もしく映る。

国政がつくる自分達のための法律。戦争や法律の抜け穴が人の人生を狂わせる。後世からも非難を受けるような国家の振る舞いを真っ向から切り込む本作は、目を背けたくなるような残虐なシーンもあるが、負の歴史をしっかり捉えた重みのあるサスペンスに仕上がっていて見応えがあった。

日本においても「負の歴史」をこれ程までに衝撃的に描いたものは少ないと思うし、本国ドイツでも大きな反響を呼んだというのが頷ける。現在公開中の「福田村事件」などがそのような作品なのだろう。

ドイツ連邦法務省が委員会を設置し、調査に乗り出したというから文字通り国家を動かした大ベストセラー作品ここにありという気がした。
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