メタ壱

花と雨のメタ壱のレビュー・感想・評価

花と雨(2019年製作の映画)
3.8
幼少期をロンドンで過ごしアジア人である事をバカにされ、日本に帰国した高校時代は閉鎖的な空気に馴染めずにいた吉田。
HIPHOPに自己表現を見出した彼だったが自らの生き方に迷う生活の中でクスリの売買に手を出してしまう…というお話。

本当の自分、とか、自分探し、とかそういう言葉は世の中に溢れていて、だからもはやありきたりで陳腐なものになっているような気がしますが、それは実はとても難しい事であり、大切なものでもあると思います。

“言葉”が生まれ確固とした自我を持った人間という生き物は、それによって他者に気持ちを伝える事が出来るようになった反面、言葉によって思考や価値観が均一化され自らを縛る事にもなってしまったような気がします。

そうして他者との繋がりが強くなった事で比較が始まり、それは争いになってイジメやマウンティングが自分の立ち位置を決める手段として蔓延し、自分の存在価値や理由を他者に委ねてしまう事に。

そんな社会の中で“本当の自分”なんて見つけるのは本当に難しい事で、自分以外の“外側”と上手く折り合いがつけられない心の中にある形の無い“本当の自分”は上手く表に出る事が出来ず、自らを迷わせる事に。

だけど吉田にとってHIPHOPがそうであったように、自分を表現出来る何かとの出会いは本当の自分に出会うチャンスなのかもしれないし、本当の自分を知る事は自分の人生を自ら肯定できる唯一の手段なのかもしれません。
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