このレビューはネタバレを含みます
一人一人の現実に本当に存在してそうなくらいの解像度の高さが素晴らしかった。
特に木帆が店を畳むといった際の夏目の行動。
本心では驚きと木帆に対する慈悲の気持ちがあるのだろうが、人を思いやる夏目の気持ちが逆に裏目となり、自然に振る舞おうとした結果店畳むお知らせとか作った方がいいですかね
というよくわからない言葉をかけてしまう感じ尊いし夏目ならそうするだろうなと大変納得した。
大抵の好きという気持ちはわからないままという木帆のセリフ。
確かに。
小、中学校を思い出した。自分も常に好きな女の子がいた。が、決して仲の良い友達にすら打ち明けなかった。
それと同様に当時のクラスメイトにも必ず好きな子ないしは気になる子がいたはず。だと思う。でも、ほとんど知らないし、大人になった今でも知らない。不思議なものである。
実際、私が当時少し気になっていた子を今になって改めて打ち明けれるかと問われれば間違いなくNO.
それくらい自分の素直で正直な気持ちを奥底から引き摺り出して真正面から解き放つ事はリスクを伴うのだ。
そのリスクというのは気持ちが実らないリスクがもちろんなのだが、それよりも私が恐れるリスクは私自身が否定されるという事実だ。
今作の登場人物も皆そのリスクを抱えていた。
だが、木帆、宏美含め皆がそのリスクを踏まえてでも気持ちを打ち明けた。
今作では己の好意を伝える事の重大さと尊さを痛感した。それが中学生という純粋に邪な思いを含まない時期の気持ちだからこそ、私の気持ちにストレートに響いた。