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Niagara, Niagara(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Niagara, Niagara(原題)(1997年製作の映画)
3.5
[ナイアガラ、嗚呼ナイアガラ、ナイアガラ…] 70点

ヴェネツィア映画祭の女優賞は私の好きな女優が受賞することが多いという妙なジンクスがあり、その例となるのが本作品のロビン・タニーと『The Goddess of 1967』のローズ・バーンである。そして、なぜかその二つには男女のロードムービーという共通点まである。本作品のセスとマーシーは同じ店で万引してたらぶつかったという、食パン咥えた女子高生もびっくりな出会い方をする。精神不安定で暴力的な父親を持ったセス、トゥーレット症候群で様々なチックに悩まされるマーシーは共に孤独で、二人はすぐに惹かれ合う。しかし、マーシーは制御できない自身のチックを無理矢理抑え込むために薬漬け、酒浸りになっており、セスもマーシーもその状況を変えられない。それについて双方もどかしい思いを抱えながら、カナダへ向けてドライブを開始する。

ありがちなロードムービーなのだが、要所要所で思いもしないシーンを入れてくるのが面白い。新しい薬を調達しようと入った薬局でガムボールマシンを倒してしまい、店員から奪っちゃった拳銃をガムボールが転がった床に滑らすシーン。ひっくり返ったマーシーの車を別のトラックが火花を散らしながら引きずって行くシーン。など、ふとした瞬間に、その他大勢の同じような映画を軽々と超えるショットをぶち込んでくる。

それ以上に本作品を特異なものにしているのが、マーシーを演じたロビン・タニーの存在だろう。想像もできない行動の動と静を連続的に並べ、その行動によって物語を引っ張っていく存在感は何物にも変え難い。しかも、その上で一般には理解し難い彼女の行動を正にも負にも扇情的に描かない姿勢も加わって、不思議な温かさを感じる作品になっている。
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