こたつむり

IDOL-あゝ無情-のこたつむりのレビュー・感想・評価

IDOL-あゝ無情-(2019年製作の映画)
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♪ 生きててよかったというのなら
  俺は何で生まれたか 

アイドルとは祭りで担ぎ上げられる神輿。
一人では成り立たないし、少人数では持ち上げることが出来ないのです。だから“メジャー”でないとダメなのでしょう。

そう考えれば、渡辺淳之介さんは正解。
アイドルオーディションという物語を作って普通の女の子を偶像にし“応援する”という想いを喚起させてお布施を集め、更に大きなものにしていく。うん。見事な発想です(元祖はモーニング娘。ですが)。

そして、大切なのは人の心を掴むこと。
自分の想いを土台にして他者に触れていく過程。それは心のヒダとヒダの間にヌルリと入っていく技術であり、アイドルに求められる資質。本作は、そんな“解答”を見せてくれるドキュメンタリーでした。

しかも、メインはアイドルの解散劇。
僕は未経験ですが、離婚が結婚よりも大変と言われるように、作るよりも壊すほうがエネルギーを消費するもの。本作にもそんな負の熱量がこもっていました。

だから、賛否両論も分かります。
特に応援していたファンからすれば憤慨するのも当然の話。追い詰められた女の子の涙なんて見たくないですからね。

でも、これが芸能界なのです。
人の心を動かすことが出来れば、それが喜びだろうと哀しみだろうと怒りだろうと正解。勿論、その先で“お金”にならないとダメなんですけれども。

だから、本作は圧倒的に大正解。
前作(2018年のオーディション)で足りなかった部分(と言ってもカタルシスはありました。真剣に頑張る女の子たちはいつでも美しいのです)を見事に克服していました。

ただねえ。
「真剣(ガチ)な人」が好きなのは理解できますが、十代、二十代の女の子たちに“あの選択”を突きつけるのは…しんどいと思いますよ。だって、最適解はひとつしかないのですから。

まあ、そんなわけで。
表層はアイドルの無常さを扱っていますが、本質は渡辺淳之介さんの姿勢に依るドキュメンタリー。どれだけの経験と覚悟をすれば、このような選択に至るのか。そんな観点で捉えると面白い作品です。
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