Asino

キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱のAsinoのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

10/16 
1年遅れでRadioactive見た。邦題はどうしても「キュリー夫人」になっちゃうんだなって感じだけど、ふつうの「伝記もの」っぽい作りではなく、彼女の功績によって後年何が起きたか(いい面も悪い面も含めて)が、マリが幻視するような見せ方で映画のなかに織り込まれていくので、そこが独特。(原作はグラフィックノベルで、後年彼女の研究成果が各方面にいかに大きな影響を与えたかが描かれているらしいので、それが挿入されてるのかな)

彼女の功績(放射性物質の「発見」のみならず、晩年、第一次世界大戦中の前線でレントゲン検査を受けられるようにしたこととか)は、途中で死んでしまう夫との関係性、女性であるがゆえにノーベル賞の対象から外されそうになったとか、夫の死後不倫報道され、その際彼女がポーランドからの移民であることが非常にネガティブに影響したこととかが語られていく。
でも、まだ(人体への悪影響が)知られていなかったんだから仕方ないとはいえ、あまりにも無造作に放射性物質を扱う様子が描かれているので、それがだいぶホラーだった。
精製したラジウムが緑色の光を放つので美しいのだけど、マリが小瓶にいれたラジウムをポケットにいれて持ち歩いてる様子が描かれるし、ショーの演出に使われたり、流行って化粧品とかまで発売されたとかぞっとするしかない。(あとで調べたら怖い話が山ほど出てきた)

マリ自身も被爆による悪性貧血で亡くなってるのだけど、むしろ長生きした方で周囲の研究者とかがどんどん亡くなっていて、娘にたいして「死に囲まれていきるのは私だけで十分」とか言う場面があって。
悲劇の側面がわりと強調されていたけど、最後まで人体への悪影響を認めなかったという彼女が最初からその点を考慮して警告を発していたら死ななくてすんだ人もいたんじゃないかと思ったりもしたけど...まあそれはちょっと映画をみただけの素人にはわかりませんけども。

あと、(マリキュリーの伝記映画であるにも関わらず)広島への原爆投下の場面も、60年代のネバダでの、アトラクション化された原爆(水爆かも)実験の場面もあるのだけど、なるほどこんな風にいれる手もあるよなぁ、となってしまってどうしてもオッペンハイマーのこともずっと思い出しながら見ることになった。別にオッペンハイマーでも同じようにするべきだったとか言うつもりもないけどね...。
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