"Blindness is Illness, and the metaphor"という言葉は盲目の妹を演じるメイベルの発言であり、映画内映画と映画そのものについて総括的な発言として登場する(しかもかなり序盤に)。我々が無自覚に差別的であることは明白であるが、それは病のように拡大もするし、取り除くことも出来るのだ。何重にもなった挿話や妄想の入れ子構造は問題の複雑さをそのまま体現しているようで、表面的には他愛ない会話で終わる世界でも、現実の世界はもっと混沌としていることが的確に提示されている。
【日本公開熱望!安易な《多様性》に釘を刺す大傑作】 架空の民俗学者Jonathan Mallory Sinusの断片的エピソードを繋いだビザールな作品『Go Down Death』で長編デビューを果たしたAaron Schimbergの長編2作目『Chained for Life』が大傑作だという噂を聞きつけ、米国iTunesで観賞しました。どうやら、『フリークス』たる映画の内幕を通じて映画界のルッキズムを批判する作品だとのこと。実際に観てみると、日本公開してほしいほどに素晴らしい作品でした。
さて、今回観賞した『Chained for Life』は色彩を帯びた『フリークス』の裏側を描いた作品である。人間の本能的にうっと拒絶したくなるような容姿の俳優を多数配置し、《多様性》の持つ欺瞞を皮肉っていました。主人公の女優Mabel(ジェス・ワイクスラー)は盲目の看護婦が献身的に介抱する映画に出演する。会話の中で、オーソン・ウェルズやダニエル・デイ=ルイスを例に挙げ、健常者である自分が視覚障がい者を演じることを肯定しようとする。それは、これから訪れる大勢の障がい者たちに対する本能的拒絶を隠し通そうとしているようにも見える。