Uえい

ドリー・ベルを覚えているかい?のUえいのレビュー・感想・評価

3.6
アンダーグラウンドのエミール・クストリッツァ監督の長編デビュー作。まさか映画館で上映されるとは夢にも思っていなかった。

映画館では本作を特集した小冊子とアンダーグラウンドのパンフレットが販売していた。特にユーゴスラビアの歴史を知っているかどうかは重要なポイントなので必読の内容だった。

60年代ユーゴスラビアが舞台だ。当時はチトー政権下で、ユーゴ独自の自主管理社会主義の元、経済発展を遂げている背景がある。

主人公の少年ディーノは学校が休みの期間に入り、兄弟や友人と過ごしていた。そんな中、悪い友人のシントルに女を匿って欲しいと頼まれる。なんとその女は有名なストリッパーのドリー・ベルだった。彼女を離れの小屋に匿いながら、恋に落ちていく。

ちょっとハードな要素もあるが、基本的にはジュブナイルものなので普通に面白い。

恋愛や、父を通じて成長する物語だが、父親の癖が強い。家父長制の家庭で、男兄弟を集めては家の問題を話す会議を行う。これは、労働者の自治を重視したユーゴの社会主義を反映したものに見えた。厳しい面だけでなく、ディーノがドリーを匿うのもひっそりと見守るなど、ディーノの自立を優しくサポートする一面も描かれていて、当時の体制の良い面も反映されているのが印象的。
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