horahuki

Short Night of Glass Dolls(英題)のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.8
俺なんで死んだんだっけ??

主人公のおっさんが死んだ状態でスタート!
おっさんが死体のまま、死ぬまでの経緯を必死に思い出そうとすることで権力者たちの陰謀に迫っていくミステリ強めなジャーロ。

カナザワ映画祭in神戸映画資料館。
これもなかなか面白かったです。今回のカナザワ映画祭は『世界陰謀論大会』という企画で、ジャーロと組織の陰謀がどう結びつくんだろ?と興味津々でしたが、陰謀に立ち向かうおっさん(死体)というなかなか面白い図式のお話で楽しめました!

あらすじ…
道端で倒れてた主人公は病院に運ばれるも心停止。死亡と判断されるも主人公の意識は残っていた。死んでも体温が下がらないことを不審に思った医師たちが蘇生術を施す。その間に主人公は自分が死んだ経緯を思い出そうとする。主人公はアメリカからやってきた記者でこちらでできた彼女と一緒に別の国に行き、暮らそうとしていた。しかしある日、彼女が服も荷物も全て残して突然失踪する。その謎を追っていると、この街では過去にも女性が突然失踪した事件が何件も起こっていて…。

ジャーロといえばバーヴァやアルジェントの作品が有名ですが、本作のアルドラド監督も名の通った監督です。アルジェントとも交流があったらしく、何の作品か忘れたけどアルジェントにアドバイスもしているようです。

本作は、バーヴァやアルジェントに見られる残虐な殺害シーンはそれほど多くはなく、かなりミステリー寄り。そしてどこかオカルトチックな雰囲気も感じさせる作品で面白かったです。

ミステリーらしく主人公が少しのヒントを頼りに失踪した彼女の交友関係や過去の事件を探ることで彼女の身に起こったことを明らかにしようとするのが作品のほとんどを占めてはいますが、ジャーロらしい殺害シーンもしっかりある。高架下を通る蒸気機関車の煙が立ち込める真っ暗な高架上通路で起こる殺人。それを主人公目線で遠巻きに撮影し、蒸気機関の煙が犯人の顔を覆い隠しギリギリ見せないという演出はその美しさに引き込まれますね。

本作は主人公の記憶を辿る旅。序盤に、記憶の残骸として断片的な映像による伏線を張りつつ、主人公の記憶が蘇っていくに連れてそのひとつひとつが次第に明らかになっていく。それにより徐々に核心へ近づいていることを表し、物語のひとつの推進力としている。

現在進行形の主人公の蘇生と記憶の旅の終着点が交差するクライマックスでは、希望と絶望の両方を同時に提示することでスリリングさを演出している。これまでの全ての物語がラストを盛り上げるための伏線へと変貌し、最後の一手に最大限の緊張感を生み出すのはヒッチコックの『知りすぎた男』を想起させます。

本作の主人公は警察からは逆に疑われているため独自捜査をするのですが、同業の友だちや主人公のことが好きな女性記者の3人がかりで展開するのも面白いし、ラストも「え!?マジで!!」となること間違いなし!面白かったです♫

フィルマさん登録ありがとうございます😊
horahuki

horahuki