ノッチ

倫敦の人狼のノッチのレビュー・感想・評価

倫敦の人狼(1935年製作の映画)
3.5
チベットで狼男になってしまった植物学者のグレンドン博士。

唯一の治療薬となる花「マリフェザ」を栽培していたが、満月の夜ロンドンの街では、人が狼男に襲われる事件が起こり、博士は苦悩する…。

有名な『狼男』が公開される6年前、ユニバーサル・スタジオで製作された『狼男』映画。

「現存」する作品の中で最も古い『狼男』映画です。

ただし映画化自体で一番古いのは、1913年公開の『The Werewolf』という映画。

しかし、1924年にユニバーサル・スタジオで起きた火災によりフィルムが消失しているので、たぶんもう観ることは出来ない。

ユニバーサルが『ドラキュラ』、『フランケンシュタイン』の怪物に次いで放った3人目のモンスターが狼男である。

ストーリーは、ロンドンに住む植物学者がチベットの山奥で狼男に噛まれて狼憑きという病にかかってしまい、その病気を治そうと研究に専念するって感じかな。

噛まれると、噛まれた者も狼男に変身するようになるという設定はドラキュラ伝説に基づいたものでしょう。

また、この時点では後年の銀に弱いという狼男の弱点が設定されておらず、随分と趣が違っています。

本作はむしろ『ジキル博士とハイド氏』を思わせる展開を見せるのが興味深い。

ガウンを羽織っている姿は狼男「らしくない」んですが、味のあるキャラだと思います。

狼男の変身シーンでの工夫としては、中庭と二階建ての建物の柱を上手く使い、変身を切れ目なく見せています。

古い映画のわりに上手いこと表現している。

現在ではどうということはないのかもしれませんが、製作された1935年という時代においては十分に優れたテクニックだと思います。

しかし肝心の狼男なのですが、特に超人的な能力を持っている訳ではありませんでした。

なんとなく怪力っぽい描写もあるのですが、女子供にしか勝てず男性にはわりと簡単に倒されます。

変身しても若い男には敵わないというのは哀しすぎますね。

しかし話の内容は悪くなく、特殊メイクもこの当時としては良い方でクラシックホラーとして押さえておいて損は無しです。
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