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台湾、街かどの人形劇のRのレビュー・感想・評価

台湾、街かどの人形劇(2018年製作の映画)
3.0
学生時代に台湾語を少しだけ勉強し、台湾旅行時にそれこそ街角で演じられている人形劇(思い返せば布袋戯ではなく傀儡戯の方だったかも)を見かけた事があり、興味を惹かれて鑑賞。
最初、伝統が失われつつあることを嘆き、今の台湾はどうしてこうなってしまったのだと溢す陳錫煌を見て、どの国でも伝統を担う老人が言う事は似ているなと思っていた。けれど作品が進み、自分の持っている技術は可能な限り全て後世に伝えていきたいという彼の姿勢が明らかになるにつれ、色々と考えさせられた。自分が人生をかけて行ってきたものが、正に自分の代で、目の前で消えようとしている時、もし私だったら何を考えどう行動するんだろうか。
陳錫煌は後進の育成だけでなく、自分の技術を映像として記録しておくことにも熱心で、そしてその姿勢は一番弟子にも理解されており、そこに意志の継承を見た。ただその一番弟子が布袋戯だけでは食べていけないと語っていたところで難しさも感じた。
布袋戯が政府のプロパガンダに使われ翻弄されてきた歴史や、陳錫煌と彼の父親との確執についても触れられており、それについても考えさせられるきっかけとなった。

作中で、布袋戯の人形が筆で文字を書き、筆を筆掛けに置き、押印するシーンを見ることができて繊細さに感動した。日本の人形浄瑠璃でも、弦楽器の弦を押さえる指を完璧に再現しているシーンがあるそうだが、月並みな表現ながら本当に凄いと思う。
どちらも存続が危ぶまれている伝統だとは知りつつ、では私に何が出来るのか?というと、例えばこの作品の再生数を1増やすくらいしか現実には出来ないんだよなあ…。
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