たらこパスタ

死に至る愛のたらこパスタのネタバレレビュー・内容・結末

死に至る愛(1984年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

上映後に映画評論家でありこちらの作品の字幕を担当されている大寺眞輔さんの講義をお聞きすることができ、その内容もとても興味深かったです!
個人的に、鑑賞しながらタイムリーに情緒が揺さぶられていくというよりは色々なシーンを観た後に思い出しながら考えが浮かんでくるという鑑賞体験でした!その中で消化不良だった部分やさらっと通り抜けてしまいそうになった部分があり講義の内容を通じてより魅力的に感じることができたと思います

この作品を観ると現在と死というのはどちらも点のイメージだなと感じます、ただ現在は形而下的(光円錐)で死は形而上的(光円錐の過去と未来が生と死に置き換わったバージョンという感じと思う)に。
時系列が明言されないけど、服装や会話からもしかしたら過去の話かな?と思う内容や死後のイメージが語られたり類似した風景(川)がうつされたり、現実かイメージかどちらともとれる場面があったり、それらが不連続でリズミカルに繋がれていました。形而上と形而下、過去と未来の行き来と不連続さが強力に符号していたと感じます!しかし、ラストのシーンは空間と時間を強く吸収するような180度パンの長回しなのも印象的です。その移動は死の手前→生までと、束の間空間に吸着する生に時間がより戻されたような印象を受け、その後ジュディットとジェロームが復活を謳う姿から切り離されて不連続になっていくエリザベスに意識が向かいました 

全体的に閉鎖的な空気感が漂っているのも印象的でした。主要4人と医師の5人以外の人物は出てこず、エリザベスたちの家、牧師宅、川、など局所的な場所の印象が強く残りますがそこに通じている周辺のリンクが描かれずまるで存在しないかのように思えました。上映後トークにてエリザベスの知りうる範囲のことしか明かされていない。生と死、愛という抽象的な題材の軸とともに彼女の身体性、パッションという軸も強いという内容の話がありそれを聞いて、彼女の認識、視界を経由した世界が提示される点も閉鎖的で浮遊感のある印象を作り上げていたと感じました。

個人的に愛と死後というのはどちらもエヴァのATフィールドが剥奪されていくような自己と他者の境界があやふやになるイメージがつきまとっていて、その点に於いては類似しているなぁと思った!
高頻度で挟まれる舞う雪にzoomしていくカット、落下する雪に絶え間なさと範囲を考えるとzoomで雪の粒が大きくなるのってちょっと不思議。作中に空中に弾かれたコインが一定の周期で同じ場所で回転し続けるシーンがありこちらも重力の法則狂ったような不思議さがありどちらも見ていて面白かった!また、雪のカットは空に向かって上昇し雪が消えて雲の上まで上がり闇が包見込んでいくように感じ音楽と共に緊張感が解けていくようなカットでした。前述した境界の開けていく感覚ともリンクした。愛のことだとおもうとここちよいけど死だと思うと怖いなと思った。
このシーンを挟んだことに関してアランレネ監督は不連続を生成したい意図があり、エリザベスたちの時空間とは独立し、音楽を味わう空白にしたかったそうです。ただブラックアウトにするとそこに意味を見出してしまうのではないかという懸念から単調なダイナミクスの連続にしたそう。この繰り返しが意味の解釈の可能性を広げることで意味が擦り切れていくというお話があり何ものでもあると同時に何でもない媒体、なるほどなぁ...!と思いました。何でもないものを突き詰めるのはめちゃくちゃ難しそうだ....

あと人物たちの立ち位置が舞台の会話劇のようで整然とした印象で美しかった!
たらこパスタ

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