YOU

ドリラー・キラー 劇場公開版のYOUのレビュー・感想・評価

3.7
アベル・フェラーラが監督を務めた、1979年公開のサイコ・スリラー。
『キング・オブ・ニューヨーク』『スネーク・アイズ』などで知られるアベル・フェラーラの長編第2作目である本作は、監督自身が主人公リノ・ミラー役での出演も兼ねているとのこと。本作はトビー・フーパーの代表作『悪魔のいけにえ』に影響を受けているらしく、ソフトのジャケットにも採用されている「電動工具を用いた大量無差別殺人」はズバリ『悪魔のいけにえ』ですよね。場面こそ多くはないですが、中盤以降はスプラッター映画として文句なしのバイオレンス描写を堪能させてくれます。しかし一方で本作は『悪魔のいけにえ』から続くスラッシャー映画ブーム下での一作というよりは、むしろアングラやヒッピー文化といった60年代カウンターカルチャー及び70年代パンクムーブメントの系譜、映画で言えば完全に「アメリカン・ニューシネマ」の流れを汲んだ作品です。それを証拠に本作は常に殺人犯となる主人公リノの目線で語られますし、物語もあくまで彼の鬱屈した感情や殺伐とした日常にフォーカスされています。終盤、社会はおろか周囲の人間にまで見放されたリノの怒りと孤独が”明確な殺意へと変容”していく様には『タクシードライバー』のトラヴィスさながらの狂気も感じました。

また劇中では主人公と同じアパートに越してきた”ルースターズ”を名乗るパンクバンドのライブやリハーサルの映像がやたらめったら挟み込まれます。これは主人公ならずとも「うるせぇ!」と怒鳴り込みたくなりますよ。ずーーっと同じ曲なのが余計にウザい!またバンドメンバーが不必要に多く、更にそいつらが狭っまい部屋に密集するせいで画的にもごちゃごちゃしていてとにかくうるせぇ!一方で主人公リノですよ、こいつもこいつで喧嘩っ早くしばしば誰かと怒鳴り合い、うるせぇ!しかも狂気に走ったリノが選択した武器はよりによって電動ドリル、これまたうるせぇ!このように本作は「常に耳障りで騒がしい、うるせぇ映画」という印象の作品で、当時の危険で荒々しいNYの雰囲気やパンクムーブメント全盛の時代感をこれでもかという程体感させられます。そして何よりこの騒々しい荒削りな作風がギリギリまで貫かれているからこそ、最後の最後でそれまでの雰囲気を一気に封じ込んだあの”極めて静寂なラスト”が何倍にも効いてくるんですねー、クーーーッ!この幕引きもまた70年代ならではですし、こういうラストが私は一番の好物でございます。という事で決して「面白い映画」とは言いませんが、70年代の不穏かつ荒々しい映画が大好きな私にとっては満足度の高い一作でした。”『悪魔の沼』枠”とでも言いましょうかね。


































































































































序盤の「ドアに穴開ける開けない」のくだりはマジで勘弁して欲しい。あれ程イライラさせられるシーンも中々ない。
YOU

YOU