痣

ドリラー・キラー 劇場公開版の痣のレビュー・感想・評価

5.0
少しでも気に障ることがあったら「ちょっとタバコ吸ってくるわ」くらいの感覚で人を殺しまくる狂人なんかを主人公にしてしてしまったばっかりにサイコスリラー的なサスペンスや起伏に富んだ脚本など何もなく本当にただドリルで人を殺し続ける90分が続く。殺す相手も主人公の八つ当たりか身勝手な私怨をぶつけているだけで感情移入の余地はないし、社会正義を下しているというようなカタルシスも当然無い。あるとすれば怒り、主人公である貧乏画家の底なしの怒りが全編に渡ってみなぎっているが、それは都市生活者は誰しもブチギレていて暴力衝動を秘めているはずだというアベル・フェラーラの主張に思えてならない。そうでなかったとしても僕はそう思う、みんな心の奥ではキレています。そもそも狂っていた男が画商を電話で呼び出した時のあの完全に狂い終わった瞬間の目、あれはブチギレている人間にしか出来ない目だ。そうしてドリルで人体に穴を開けまくった最後に、水曜日のダウンタウンもびっくりの”結局ベッドの中にドリラーキラーがいるが一番怖い説”を提唱し検証結果は見せずそのままエンドロールという意外にも気の利いた幕引き。傑作!!!
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