COLORofCINEMA

光を追いかけてのCOLORofCINEMAのレビュー・感想・評価

光を追いかけて(2021年製作の映画)
4.8
●屋根の上に立つ真希(長澤樹)。
それを発見してジッと見つめる彰(中川翼)。
この序盤のシークエンスでこころ魅かれる。
メインタイトルの出るタイミングも好み。
ジャンル分け不可。もしかすると夢を見ていたのかもしれないとも思えるこの不思議な感覚。
これから先も忘れがたい作品になると思う。

(ここより内容に触れています)

●今いる場所の消滅。
過疎化、母校の閉校。
「閉校じゃないよ、廃校だよ」
ミステリーサークルは家庭に問題を抱え不登校となっている真希が今いる(在る)ための証明のような場所。
多くの人が目撃するUFO(謎の光)。不安や戸惑いや希望、いろいろな感情がその光の先を見つめる。
留まる者、去る者。
母校が無くなることを真摯に受け止め閉校祭を成功させたいと真剣な学級委員長、紗也加(中島セナ)。見守る彰の父、真希の叔父。地元に帰ってきたものの、やはりどこか馴染めず、また東京へ出ようかと迷っている担任。それぞれの思いが閉校祭へ向けて集約されていく。
●真希のことばかり、と軽い嫉妬と疎外感を勝手に持ってミステリーサークルのことをネットに上げてしまう翔太(クラスで孤立していたが彰が声をかけ友だちに)
それを彰のせいと勘違いして閉校祭準備中の教室へ駆け込む真希。
すべての感情がぶつかった時、再び光が。

●中川翼、長澤樹、中島セナ、メインキャストは芝居も見ずに写真でセレクトして芝居も見ず会うだけで決めたという辺りにも、監督が着地点に関しての確信があったことは想像に難くない。
(秋田出身の柳葉敏郎、生駒里奈は重要な役どころということで最初から)
●真希を演じた長澤樹の表情が素晴らしく、それを追い捉えたショットが光に包まれた黄金色の稲穂の風景と相まって至福の情感を生む。

●公式ガイドブック掲載のシナリオを読むとエンディングで変更カットされているシーン(彰のモノローグなど)がある。(その他にも幾つか)
でも、出来上がった本編ラストの方が何倍もよかった。

余談
●前評判で『リリイ・シュシュのすべて』っぽいと聞いていたが、なるほどと思える部分もあるが全く別のもの。それよりヒロイン岡本真希役の長澤樹という名前、岩井俊二監督『Love Letter』の主人公が樹(いつき)だったけれど、こっちの方が偶然?にしては不思議な符号。
COLORofCINEMA

COLORofCINEMA