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エクスプローディング・ガールのakrutmのレビュー・感想・評価

4.2
彼氏とのしっくりいかない関係性に揺れ動く女子大生の繊細な心情を縁側で日向ぼっこしているような柔らかな映像を通じて描いた、ブラッドリー・ラスト・グレイ監督の代表作となるドラマ映画。

春休みでブルックリンに帰省した主人公の女子大生・アイビーは、彼氏の携帯がずっと留守電で連絡が取れない状況に不安を覚える。一方,同じく帰省したアイビーの幼馴染・アルは、両親が彼に内緒で実家の部屋を貸してしまったために、アイビーの家のソファーで寝泊まりすることになり、春休みのほとんどの時間を二人は一緒に過ごすことになる。若年性ミオクロニーてんかんという病気を持つアイビーは自分に自信を持つことができず、彼氏に振られるのではないかと精神的に不安定になるが、アルの前ではそういう心情を隠そうと努力する。しかし、優しく接してくれるアルの存在が次第に大きくなり、それに比例してアイビーは感情が抑えられなくなる。

思春期ならばまだしも、大学生にしてはちょっと幼い気がしないでもないが、若い頃からの持病というエクスキューズを与えることで、またアイビーを演じるゾーイ・カザンの繊細な演技のおかげで、ほろ苦い青春のひとときを瑞々しいままに真空パックして額に飾ったような、美しい映画に仕上がっている。ブラッドリー・ラスト・グレイ監督がアイビーというキャラクターを考えた時に思い浮かべたのがゾーイ・カザンだったそうであり、その後、本映画への出演が決まった彼女とは何度も散歩をしながら彼女自身のエピソードを聞き、ストーリーを構想したとのことである。また、アル役のマーク・レンドールともアルというキャラを一緒に作り上げている。ゾーイ・カザンの相手役としてマーク・レンドールの柔らかな演技も見逃せない。

二人がカードゲームをしながら静かに会話を交わす柔らかな光が差す緑の多い公園や、二人で佇む鳥が飛び交う屋上での夕暮れのシーンなど、詩的でとても美しい映像も本映画の魅力の一つである。さらに、クローズアップによるアイビーの心情に寄り添う室内ショットとキャラどうしの会話に環境音をかぶせた第三者的な視点を意識した引きの屋外ショットを使い分けているのも印象的。これによって理解できそうで理解できないアイビーの心情の機微を上手く表現している。

以上のように、個人的にはとても印象に残った作品である。ただし、前述したように主人公の人物造型がちょっと幼すぎにも見えるので、人によって大きく意見の分かれるとは思う。
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