YYamada

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男のYYamadaのレビュー・感想・評価

3.7
【実話に基づく傑作映画たち】
 ~事実は小説より奇なり

◆ベースとなった史実
〈大企業による環境汚染の隠蔽〉
 ~20年に及ぶ公害訴訟の和解/ 2017年
・場所: アメリカ/ウェストバージニア州
・人物: ロブ・ビロット

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・1998年、オハイオの名門法律事務所で働く企業弁護士ロブ・ビロットは、ウェストバージニア州の農場が、大手化学メーカー・デュポン社の工場廃棄物の汚染により、190頭もの牛が病死したという調査依頼を受ける。
・ロブの調査により、デュポン社が発ガン性のある有害物質の危険性を40年間も隠蔽し、その物質を大気中や土壌に垂れ流し続けた疑いが判明。ロブは7万人の住民を原告団とする一大集団訴訟に踏み切るが、巨大企業を相手にする法廷闘争は、真実を追い求めるロブを窮地に陥れていく…。

〈見処〉
①真実に光をあてるため、どれだけの
 ものを失う覚悟があるのか―
・『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』は、2019年に製作されたサスペンス映画。監督は『キャロル』のトッド・ヘインズ。
・本作の主演は『アベンジャーズ』シリーズのマーク・ラファロ。2016年6月のニューヨーク・タイムズ紙「デュポン史上最悪の悪夢となった弁護士 」の記事を目にした、環境保護活動家という一面も持ラファロは、自らプロデュースにより、本作映画化を決意。
・共演は、ロブの妻役を『レ・ミゼラブル』のアン・ハサウェイが演じるほか、『
ショーシャンクの空に』のティム・ロビンス、『インデペンデンス・デイ』ビル・プルマンら豪華キャストが顔を揃えている。

②テフロンとPFAS
・「焦げ付かないフライパン」の製品加工用途で有名な耐熱性・耐薬品性に優れるポリテトラフルオロエチレン・フッ化炭素樹脂、商品名「テフロン (Teflon)」。
・1938年に米国デュポン社の研究員によって発見されたポリテトラフルオロエチレンは「マンハッタン計画」=原子爆弾の開発に大きな役割を果たし、もともとは軍事利用を目的とされていた化学素材。
・終戦後の1945年、デュポンは「テフロン」を商標登録出願し、徐々に民間利用されるようになったが、過去の精製過程に使用されていたのが、化学物質PFOA(ペルフルオロオクタン酸)。
・このPFOAは、分解することなく体内に残り続ける「永遠の化学物質/フォーエバー・ケミカル」=「PFAS (ピーファス)」の一種であるが、本作で描かれるとおり、7万人の健康調査データの分析によって、PFOAは妊娠高血圧症、妊娠高血圧腎症、精巣がん、腎細胞がん、甲状腺疾患、潰瘍生大腸炎、高コレステロールの6種の疾患と関連し、後に米国人口の99%の血中にPFASが存在するという調査結果も出ている。
・「永遠の化学物質」との対峙は、人類の大きな課題である。

③結び…本作の見処は?
化学物質による公害は「MINAMATA」だけではない。
◎: 126分の上映時間中、ドラマチックな展開に乏しく、薄暗い映像が淡々と進む作風が、一向に進展しない公害訴訟の行方を端的に示している。人類が認識すべきこの問題に危機感を持つためには、この演出のアプローチは正しいと思う。
○: 序盤の「Take Me Home, Country Roads」、エンドロールの「I Won’t Back Down」…もの悲しく流れるカントリーミュージックが印象的な作品。
○: 本作の日本における配給は、木下工務店グループの「キノフィルムズ」。近年、同社が配給する作品は、小規模であっても佳作・快作ばかりで要注目。
▲: 重厚な作品にて、豪華俳優陣のキャスティングが霞む。
YYamada

YYamada