yumiko

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男のyumikoのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

デュポン社の環境汚染に対する訴訟のお話。実話。

1998年、弁護士のロブ・ビロット(マーク・ラファロ)の元に、自身の農場で牛が不可解な死をとげたビル・テナントが助けを求めてくる。大手化学メーカー、デュポンの工場からの廃棄物汚染により、テナントの牛は190頭も死亡したのだった。

本来、企業側の弁護をする事務所だったが、ロブは情報開示を要求。読む気持ちを折るような量のダンボールが部屋いっぱい運び込まれるという、出だしからの雲行きの悪さが伝わってくる。でも、コツコツと書類を分類していくロブは、“PFOA”という単語に行き着いた。

その言葉に触れたくない企業側。化学物質の専門家に助けを求めると、「口に入れるということは、タイヤを食べるのと同じ」と言う。40年もの間、この有害物質を、”規制外”だからといって隠蔽をしてきたのだ。摂取すると体内に蓄積されるので”永遠の化学物質”と呼ばれていた。

ロブは7万人の住民を原告団とした集団訴訟に踏み切るが…

自身も重い症状が現れ始めたテナントに深刻な環境汚染の事実を伝えに行ったロブに対し、テナントが、「金はいらない。全員監獄にぶち込め!」と言うシーンが印象的。ほんとそれ。それよりもロブはテナントに「引っ越してくれ」と言うの。

テフロンが有害だって話、よく覚えてます。社員の被害が想像を絶する深刻さなのに、実験動物のような扱いなのが、ゾッとする。PFOAは製造時に発生するので、製品を使用する際には問題ないとされてる。

終始どんよりと曇っていて、青白い、薄暗い雰囲気。どんなに正当な理由で訴えても、巨大企業が壁のように立ちはだかる、絶望感がすごい。プレッシャーで身体を壊してしまうロブを演じるマーク・ラファロの物静かなのに情熱的な演技がすごく良かった。

7年間、住民の血液検査と物質の因果関係を精査する検証の結果を待つ気持ち。もしかしたら証明されないかもしれない。その間減給されたりしてる。住民からの苛立ちも受け止める。そりゃ身体壊すよ。

政府にさえ影響力を持つ巨大企業は、汚染と6つもの病気の因果関係が証明され、3,550人もの人がすでに病気が発生していても、びくともしない。むしろ、全員と裁判し長引かせると言う戦法にでてくる。本当は全員に経過観察と治療の費用を企業側に出させたいんだけど、それさえもしない。

それでも、あのとき、部屋いっぱいの書類に対峙したように、一件一件、ロブ自ら裁判をしていくの。

1962年には汚染や健康被害がわかってて、それを隠し、1998年ごろやっと最初の訴訟、その後の集団訴訟は2005年。健康被害の結果を7年も待って、2017年に和解。デュポンのホームページを見ても一つもそんなこと書いてないし、むしろ健康重視を語ってるところが怖いくらい。(この汚染の関連の科学事業部は2015年に分離独立してるみたい)

淡々と進むストーリー。家族の葛藤。大企業側に日和らない姿勢。この環境汚染問題の深刻さを痛いほど感じられ、ロブ・ビロットへの敬意が感じられる素晴らしい作品でした。

日常、たくさんの科学技術の恩恵を受けてる裏で、どんなことが起こっているのか。知ることができてすごく良かった。
yumiko

yumiko