『情事』L'avventura 1960
1960年日本公開映画
アメリカ
「五つの銅貨」「ベン・ハー」「サイコ」「許されざる者」「スパルタカス」「アラモ」「オーシャンと11人の仲間」「アパートの鍵貸します」
フランス
「大人はわかってくれない」「勝手にしやがれ」「太陽がいっぱい」
イタリア
「若者のすべて」「刑事」「甘い生活」
アメリカ映画はカーク・ダグラスが自分のプロダクションで製作した「スパルタカス」を除いて大きい映画会社が製作して配給するシステムで作られている作品。いわゆるハリウッド大作の時代。西部劇の本数はかなり少なくなってきている。
フランスはヌーベルバーグ。
そしてイタリアはヴィスコンティとジェルミとフェリーニとアントニオーニ。フェリーニの「甘い生活」ははっきりしたストーリーよりも映像で象徴的に語る作品。
そしてアントニオーニの「情事」はストーリーははっきりしているが観客をぽかーんとさせた。いや最初の試写ではブーイングが起きた。
男女が島に船で遊びに行きアンナという女性が姿を消した。いくら探しても見つからない。アンナの恋人サンドロとアンナの友人クラウディア(モニカ・ヴィッティ)は共にアンナを探していくうちに深い仲になっていく。そしてアンナの行方を追うことをいつの間にかやめてしまう。あるパーティでクラウディアはサンドロと他の女性との情事を目撃する。後悔してすすり泣くサンドロに寄り添うクラウディア。fin。
何のこっちゃ?アンナの行方は最後まで分からないまま映画は終わる。
映画の冒頭、アンナは苛立っている女性として現れる。理由は何だかはっきりしない。そして姿を消す。犯罪に巻き込まれたのか自殺したのか全く分からないまま。
サンドロとクラウディアはアンナに対する後ろめたさを感じながらズルズル付き合ってしまう。
後ろめたさがあるからサンドロの浮気を見つけてもクラウディアはサンドロを責めることはできない。
人と人が出会って求め合って幸せになるか不幸せになるか。映画みたいなハッピーエンドもバッドエンドでもない割り切れないモヤモヤした気持ちを抱えたまま立ち尽くす。それも人間ではありませんか?そうアントニオーニは問いかける様だ。
それはそれとして第二次世界大戦で敗戦国となったイタリア。この映画の登場人物はもはや生活のためあくせく生きる人たちではない。運転手付きの自動車やクルーザーを持っている人達だ。
同じ年にヴィスコンティが撮った「若者のすべて」は田舎からミラノに働きに出た貧しい若者達の話だった。同じ年の同じ国の違う階層の人々の物語だ。「若者のすべて」の若者達から見れば「情事」の登場人物は生活のためにあくせくする必要がなく愛してるだの愛してないだのやってられるいいご身分に見えるだろう。図らずもこの時代のイタリアの貧富の差を感じた。
モニカ・ヴィッティは見た感じがファッションモデルみたいなルックスだけどこのモヤモヤした感情を見事に演じている。RIP