耀加

シネマ歌舞伎 女殺油地獄の耀加のレビュー・感想・評価

シネマ歌舞伎 女殺油地獄(2018年製作の映画)
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理性の糸がプツリと切れ、一心に人を殺める光景。果てまで堕ちてしまう瞬間。何もかもに心が奪われ、恐ろしく素晴らしいものだった。松本幸四郎さん演じる与兵衛の、瞳の動きや声色に、身体が強張ってしまった。暗がりで油と血の混じるベチャ、ベチャという音。拭い去れない。与兵衛が花道の闇へ消えていくまで、ずっと、息を殺して観た。
シネマ歌舞伎というものが初めてだった。表情が明瞭に伝わりワクワクした。斜めから、後ろから、さらには真上からも、目線に沿って移動したり、臨場感ある手振れの様な演出も、様々なカメラワークが施されていた。殺しが行われる冷たく張り詰めた、血生臭い凄惨な場面をダイレクトに魅せてくれた。放蕩に明け暮れる与兵衛、どうしようもなくクズな男なのに、仕草や話し方に妙に可愛げと色気があり憎めない上に見惚れてしまう。と思いきや、腹の内で人としての何かが終わり、事を起こしてしまうところ、あの止まらない狂い様は、なんとも怖く、なんとも素晴らしい演技でした。
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