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ミセス・ノイズィのoguchiのレビュー・感想・評価

ミセス・ノイズィ(2019年製作の映画)
2.5
あらすじが面白かった。場面の並び、ひねりが無理なく進行していって、クライマックスでこの物語の大事な部分にちゃんと行き着く誠実さがあった。

でも正直ひとつひとつのシーンの安っぽさはかなりのものだと思う。
ただ撮ってるだけみたいなカメラワーク、わかりやすいセリフに芝居、その結果再現ドラマを見ている気になる。音楽のダサさもげんなりしたし。
この監督が大事にしている部分、気をつけている部分がよく分からなかった。

天野千尋監督は脚本も書いている。だからこの主人公には監督の経験も生きていると思う。
それが感じられず、スランプの作家ってこんなんでしょー程度の描写がかなりある。
主人公が文学賞のトロフィーを引き出しにしまう場面。トロフィーの箱はなにやら商品名隠しのテープが貼ってあるし、その引き出しの中は空っぽ。引っ越したばかりだから空っぽでOKなんだろうけど、ディテールで人物描写することの気のまわらなさを感じた。
小説が書けないもどかしさで頭をかきむしるとか、揉め事のときに怒りをキーっと顔芝居でやるのもダサい。
見ていて「あーこういう言い方!」とか「あーこの動き!」っていう共感性羞恥だったりヒリヒリする芝居の面白さが無い。

脇役のセリフも絵に描いたような説明ゼリフで、この人たち説明するために登場してるの? という感じ。監督がいろいろ気がまわらないタイプなのかもしれない。
ご近所トラブル動画が世の中に広まってしまう過程のダイジェスト、街の人々がスマホを見て「なにこれウケるー」的な感じでやっちゃうのにもそれが表れている気がする。
描写力を感じないことで話の流れを追うだけの作品に見える。

最終的にある人物が声を上げる所はグッときたけど、それはシーンの並びとタメがちゃんとしているからであって、脇役やエキストラたちのあまりの類型的描写により迫力不足になっていると思う。

最後の読書場面も良いとは思うんだけど、監督が「はい笑ってー」「はいしんみりしてー」って指示してるみたいに見えるのもこれちょっと……となるし。

エンディング曲もタイアップソングらしき歌が流れて、やっぱりこれ残念な映画だなーというダメ押しをされた気分だった。
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