みーちゃん

悪なき殺人のみーちゃんのレビュー・感想・評価

悪なき殺人(2019年製作の映画)
4.5
おもしろかった。
"同じ出来事を複数の登場人物の視点から描く手法"の作品は、これまでも観たことがあるけど、その手法がもたらす効果が(私がこれまで観た作品とは)少し違っていて、新しさを感じた。犯人は誰?事件の顛末は?という以上の感慨があった。

◇ここから本編に触れます◇


本作は、章(視点)を単体で見たら、たぶん面白くない。それどころか気分が悪いだけかもしれない。でも、それぞれにハッとなる箇所や、共感する部分が確実にあり、物語の進行と共に、死角に徐々に光があたり、全てが繋がった時、不思議なほど、全く違う感情になった。

しかも、誰もジャッジされない。何も昇華しない。そこが、とても心地良く感じた。そして、本質的なスタート地点は一体どこだったんだろう。と考えると、自分の中でループして、切なくなる。 

アリスが、好きになったとセドリックに語れることも、ジョゼフの、常軌を逸しているように見える行動も、ミシェルが、決してマリオンに襲いかかったりしなかったことも、自分がそれぞれの立場に立ち、本気で考えた時、私は全員のことが理解できる。合法か否かじゃない。誰も人間として最低なことはしていない。と思う。だから、またループする。