Yellowman

悪なき殺人のYellowmanのレビュー・感想・評価

悪なき殺人(2019年製作の映画)
4.0
孤独な男女5人の愛の加速度

舞台は、白銀に覆われたフランスの高原。
猛吹雪の夜、女性が車を置いたまま、失踪したというニュースでストーリーは、動き出す。
登場人物は、農場を営むミシェルの妻、アリス。共済組合員として働いており、唯一の楽しみは、組合の加入者であるジョゼフとの不倫。ジョゼフは、数年前に母を失くしてから、精神を病んでいる。
アリスの夫、ミシェルも、何やら隠し事を抱えている。
パリのレストランで、働く若い女性マリオン。彼女は失踪した大富豪の妻40代のエヴリーヌと同性愛の関係で、ある日、パリでエヴリーヌに一方的に別れを告げられたものの、別荘がある聞いてアリス達の住む高原にやって来た。フランスから遠く離れたコートジボワールでは、アルマンという青年がSNSの出会い系チャットで、女性になりすまし、相手から金を引き出していた。

この5人がどう絡み合うのかを、最近では「最後の決闘裁判」で用いられた、登場人物の視点で、それぞれの章に別れて真実を浮かび上がらせると云う手法をこの映画でも、失踪事件の発生前後の同じ時間を登場人物の章に分けて辿って行くという緻密な脚本で、描かれ、そこでの伏線の回収が実に見事である。

思うのは、人間の愛の加速度の怖さ。愛を求めるあまり、周囲の景色が見えなくなる程、アクセルを踏み込む。何かに衝突するという理性が残っていても。
一度、加速したら止まらないのが人間の業の深さ。そんな姿をこの映画では、滑稽ながらも残酷に描いている。
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