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わたしの叔父さんのYのレビュー・感想・評価

わたしの叔父さん(2019年製作の映画)
4.6
始まりは、なかなか出てこない日の出のようで、ポツリポツリとセリフが出てくると、たまに人の声が微かに入る音楽みたいに静かに流れ、しずかで薄雲った画面が続くからこそ、たまにそこに鮮やかな色が落とされると際立っていた。そのコントラストに動を強く感じて、心もはたと動く。

毎朝のテレビのニュースは、イタリアやフランスの移民問題、北朝鮮の核実験、日本の豚の輸入の話など、世界の動きから取り残されたようなデンマークの田舎の日常。

周りの大人たちがクリスの将来を思って遠慮がちに視野を広げてあげようとする優しさも、頑固につっぱねられても何度もクリスを想って尋ねてくるマイクのことも、最後どのように受け取るかはクリス次第。
クリスは農場での暮らしが、縛りの多いものであることや外的要因により諦めたことがあったことについて、実はそこまで恨めしくは思っていなくて、守りたい自分の唯一の居場所であり、そこから逃れたいと強く願っているわけではないと思った。

震災や戦争で叔父叔母と甥姪が血のつながりで身を寄せ合って協力していくこともあると思うが、やはりそこには、友達や近所の人ではなくて、失った親族との思い出を胸に、残された親族同士で助け合っていくことを選ぶ人は多いだろうなと思った。
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