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叫び声のlpのレビュー・感想・評価

叫び声(2019年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

日本映画スプラッシュ3本目は、渡辺紘文監督待望の最新作『叫び声』!
現在アップリンク吉祥寺で特集上映が組まれている渡辺紘文監督。特集上映の期間と映画祭の期間が重なっていることから、今回は出品無しと予想していたけれど、何とまさかの新作が日本映画スプラッシュに選出!しかも内容からは何やら『七日』を予感させる。
渡辺紘文監督が日本映画スプラッシュに帰ってくる。しかも、あの台詞無し、音楽と白黒の映像のみの『七日』の世界を再び体感できる(アップリンク吉祥寺の特集上映用に創られたパンフレットによると『叫び声』は『七日』を超える映画だとか)とあれば、「これはもう絶対に観たい!」ということで迷わず鑑賞することに。そしてこれが期待通り、渡辺紘文監督のセンスが全開の新作だった!

豚舎で働く主人公の「日常」をモノクロの映像と音楽のみで描き切る。主人公の勤め先が牛舎から豚舎に変わっているだけで、基本的にやっていることは『七日』と全く同じだ。
しかし、主人公の姿を追い続ける『七日』に対して、今作では随所でズームアップを使用していたり、豚舎の豚達の様子を象徴的に映していたりと、映像表現は『七日』よりもシャープになった印象だ。監督が何らかの意図を持って撮っていることは、『七日』の時よりも明確に伝わってくる。

映し出される主人公の様子についても、『七日』や『プールサイドマン』のようにテレビのニュースが流れている演出が無くなっており、主人公の社会からの隔絶がより際立った印象だ。その一方で、今回は和太鼓をベースにした音楽が随所で使われており、その力強い音楽から主人公の後ろ姿には何処か頼もしさも感じられる。
また、耳を塞ぎたくなるような豚達の鳴き声と、その豚達を黙々と世話をする主人公の構図にも、何か現在の社会を踏襲するものがあるのでは?とか、映画後半のあるシーンの意図は?・・・と考え始めると深読みが止まらなくなるのだけれども、ついついそこまで思考の枝葉を伸ばしてみたくなってしまう。
今回も渡辺紘文監督の世界観に完全に魅了されてしまった。

 映画の解釈は『七日』と同じく今回も完全に観客へ委ねられていることもあり、頭をフル回転で挑む75分。まさに映画を体験する至福の時間だった。
大田原愚豚舎ファンは必見の新作だ!
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