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ラ・ジュテのhoshのレビュー・感想・評価

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)
3.9
第三次世界大戦下の世界。人体実験で時間旅行する男と過去の世界の女との関係の顛末を描く。
全編白黒、静止画の写真で構成。

モノクロ、静止画という情報の制限がありながら退屈しない。全編止め画で成立する完璧な構図(特に博物館と地下)と緻密な音響、ダークな音楽。細部が完璧に融和すれば最小限の要素で作品と世界観は成立するという見事な例。

主人公の男は過去のイメージ(女)に取り憑かれている。美しい残像の中に生きがいを見出し、時に苦しさに苛まれる。この状態は映像という既に過去になったものに心動かされ、励まされ、時には狂わされる我々観客そのものでは。美しい瞬間を永遠に封印する映像や写真。忘れがたい一瞬に触れるために作品を見返す私たちと女への妄執から時を越える男の生き様はピッタリと重なる。映画鑑賞の本質ではないかな。推しに変換するとアイドルファンの精神になるのでドルオタ映画とも。
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