静止画の連続が、世界観の奇怪さと奇妙な反復を演出している。
動画は動画が流れていく時間を観るものに感じさせてしまう。静止画であればこそ時間を超越した物語が可能になっているのだ。
それゆえに唯一、ムービーになっている彼女の顔だけが時間を超越していることを意味する。主人公が過去にあっても未来にあっても、その彼女の目は心から離れることがない。
彼女がいればこそ彼は時間を越えることができたが、それは彼が過去に執着し、現在に執着していなかったからだ。
現在に執着する者は実験の準備段階において死に、過去に執着する者は送られた過去において死ぬ。
被験者が生き延びるには未来に行くしかない。未来に希望を持つほかない。
だが、それは不可能だった。もはや3つめの世界大戦を経験した世界においては。人間は否応なく何の希望もなく死すほかない。