〈東京国際映画祭2019にて〉
これがコンペ作とかマジすか…って感じだが、案外フィルマ評価が悪くなくて唖然。
内モンゴル自治区の広大な景観とそれを切り取った撮影は確かに素晴らしいかもしれないけど、ストーリーがそれらに伴っているかと言われれば全くもってノー。
田舎と都会。田舎者が都会に抱く憧憬や発展性への憧れが割と今作の重要なポイントで、それによって夫婦間にズレが起こり始める。都会へ移りたい夫と、田舎で住み続けたい妻。こんなのはよくある話なので真新しさは皆無だし、その描写もスマホに出会ってウッキウキぐらいのもんだから現代を舞台としている必然性も薄い。
そういった凡庸な演出やストーリーを、度々挟み込まれる美しい景色の数々で取り繕い、誤魔化しているとしか思えない。目くじら立てて怒りたくなるほど軽薄な作品という訳でもなく、大して面白くないあまり「無」に誘われるという自分にとっては珍しいタイプの作品だった。