佐藤二朗の作るものはエンタメというより武器だと思う。
全くの憶測だからこれは先に記述しておこう。
※私が彼の脚本・演出・演技(他作品を含む)を観てそう感じたというだけの話です。※
彼の人生に何があったのかは知らないが、
今まで経験してきたもの、築いてきた価値観
そういうものを表現しないと生きていけない人なのかなと思う。
表出したくて堪らないから、映画にした。観る人なんて関係ない、自分の為の映画。
彼が作るものは、自分が生きていく為の道具だ。
それが悪いとは言わない。
芸術家と呼ばれる人は寧ろそういう人の方が多いのかもしれない。
ただ、彼が作るものと私が観たいものには決定的な違いがある。
私が観たいのは人間の多面性。
私はどんなに生きるのが辛くなっても、誰かを憎んでも、根本には人間って面白いなと思っている。
自分の心が醜いなと感じる瞬間でさえ、そういう人間らしい面を持っている自分が好きだと思う。
どんな犯罪者にだって良い面はあると思うし、逆に聖人君子なんてものは気味が悪い。
両方持っているからこそ面白く、愛おしいのだ。
彼は『これだ』と決めたら『これ』しか描かない。
あくまで沢山ある中の、一つが『これ』なのに。
他は最初から無かったかのように。
だから作品のクオリティは高い方だと思うし、他キャストの芝居も下手だとは思わないけど
何か足りない。
何かは描かなかった反対側。
エンディングは上手くまとまっていて気分の悪い終わり方ではないけど、別にそれが欲しかったわけじゃない。
映画に答えを求めてるわけじゃない。
寄り添い、一緒に考えてくれればそれで良い。
今藤洋子と太田善也のシーンは面白かった。