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はるヲうるひとのradioradio526のレビュー・感想・評価

はるヲうるひと(2020年製作の映画)
3.0
「虚(うつろ)に口をつけたら嘘になる」

「はるヲうるひと」鑑賞。

その島には至るところに売春宿があり、本土からの連絡船が島への客の往来の足となっている。ある売春宿の3兄妹…店を仕切る長男の哲雄は凶悪な性格で宿を支配し、次男の得太を子分のように従えている。長女のいぶきは、長年患っている持病で床に伏している。この売春宿で働く4人の遊女たちは、女を売る家で唯一女を売らず、誰よりも美しいいぶきに嫉妬していた。

架空の島という設定だが、一定の年齢の男性なら耳にしたことがあるのではないか…関西某県に実在した島…あれがモデルなのだろう。
佐藤二郎はコミカルさを差し引くと何を考えているのか分からない不気味さがグッと前に出てくる役者…怪優だ。
過去のトラウマを誰より深く抱えて傍若無人な振る舞いを繰り返す哲雄…それに抗えない得太といぶき、終わらないし逃げられない恐怖の連鎖。
仲里依紗の儚げな表情がとても印象的、個性的な遊女達の中でも一際不憫なのは実はいぶきなんだと思う。嫉妬を諦めで受け流すことの切なさが刺さってくる。
兄妹の過去の秘密が明らかになる…辛くても無理矢理笑おうとしていた兄妹に笑える日は来るのか。

令和のご時世、なかなかディープな題材であり、今や観る人を選ぶ作品かもしれないけど、それだけに映画化に拍手を送りたい。
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