メグスリ

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのメグスリのレビュー・感想・評価

4.1
スパイダーマン作品を見て泣くことって今まで全くなくて、むしろ全く肩入れする気になれない身勝手とも言える道徳心がなせる"良き"隣人像に首を傾げてばかりだったのだけど、この作品だけは泣いた。今までのスパイディではできなかった、力を尽くしきれなかったことをこれでもかとPDCAして一つの到達点に至った感じ。

Dr.ストレンジが大活躍!ということで大満足。ストレンジが作り出す異次元空間の映像クオリティがめちゃめちゃにすごくて(語彙がない)、インターステラーやインセプションといったノーラン作品でワクワクさせられた世界と似た感じで大興奮だった。こればかりは時代が進んだことを実に嬉しく思う。

いつの世代からのトレンドか、正義と悪の二項対立で成り立っていた物語における「正義とは何か」から、「正義と呼べるものは存在しない」という脱構築的な物語を紡ぐ映画が増えた。マルチバースの存在概念を肯定することはすなわち価値観の多様を認識することも意味していて、スーパーヒーローが必ず勝ったり、ヒロインと結ばれたりするのが「ハッピーエンド」でないことも、「ハッピーエンド」「バッドエンド」の二項自体を対立させないこともこの文脈の中に包括されていると思う。

余談として、個人的に昨今のアメリカはあらゆる意味で確実にNerd化している、と思う出来事が数多くあったのだが、本作品は先鋒のひとつとして本格的に舵を切っている感じがした。