ジェイコブ

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

ロンドンでの死闘の末に倒したミステリオが残した「私はスパイダーマンに殺された。スパイダーマンの正体はピーター・パーカー」というメッセージは、アメリカのみならず全世界に衝撃を与えた。世論はスパイダーマンの是非を巡り真っ二つに分かれ、批判の矛先はピーターだけでなく、友人のネッドや恋人のMJまでも向けられる。今や世界一の有名人となったピーターだが、その影響は彼や友人達の進路にも及ぶ事になってしまう。追い詰められたピーターは、アベンジャーズの一人であるスティーブン(ドクター・ストレンジ)のもとを訪れ、自分を過去に戻してこの騒動をなかったことにしたいと相談する。ストレンジは過去には戻れないが、世界中の人の記憶から、スパイダーマンの正体を忘れ去らせる事は可能であると語り、ピーターと共に魔術を実行に移す。儀式は順調に進むように思われたが、ピーターがストレンジの邪魔をした影響で、世界に思わぬ事態を招くことになる……。
マーベルスタジオ作品最新作。トム・ホランド演じるスパイダーマンの集大成であり、マーベルがアベンジャーズシリーズにおいて、マルチユニバースの扉を開けた記念すべき劇場版第一作。アンドリュー・ガーフィールドやトビー・マグワイアといった過去にスパイダーマンを演じた面々だけでなく、ウィレム・デフォーのグリーンゴブリンやジェイミー・フォックスのエレクトロといった別の世界のヴィランもいりみだれた正に大乱闘スマッシュブラザーズ状態。これだけキャラクターか多くなれば、それぞれの魅力を描ききれずに終わるんじゃ……なんて心配はエンドゲームの頃に捨て去っている。一人一人余すところなく見せ場を作っており、今までピーターの親友ぐらいの位置づけでしかなかったネッドにも活躍の場があるのが非常にグッドな点。また、意外な所で言えば、序盤に警察に捕まったピーターを助けたのがまさかのデアデビルことマット・マードックであるのが面白い。アベンジャーズでは超雑な扱いを受けていたディフェンダーズからの出演を、Netflixはあまり面白く思っていないのでは……と勘繰ってみる笑
ラストでピーターは世界を救うため、スパイダーマンの正体を例外なく全員が忘れるようにストレンジに依頼する。自ら招いた種であるとはいえラストで愛する人達から忘れ去られ、生活も全てを失ったピーターは、薄暗いアパートで住むことになる。恋人のMJや親友のネッドに全てを説明して元の関係になるつもりだったものの、自分と関わらずとも幸せに暮らしている彼らを見て、正体を明かすことなく去っていく。ホームカミングでは自分が目立つことばかりを考えてスタークに諌められていた少年ピーターが、前作〜本作の経験を通してヒーローの孤独と責任を真の意味で理解して成長したと感じさせられる。確かに人によってはバッドエンドに見えるかもしれないが、ピーターがハッピーに語った言葉が希望に満ちていた事からもわかるように、この結末は否応なくではなく、ピーターが自ら選んだ結果によるものであり、紛れもないハッピーエンドなのだ。そういった意味では、「バタフライエフェクト」にも通じるテーマを感じさせられる。
個人的には、過去のスパイダーマンでは悪事の末に死んでしまう運命にあるヴィランを、自己犠牲を以て救ったトム・ホランド版スパイダーマンの姿が、シン・エヴァのシンジ君と重なって見えた。トム・ホランド版にとってこれ以上ないラストに思う。