タカシ

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのタカシのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

『一体私たちは何を見せられているのか』


まず素直に驚いたのは、ここまできっちりと物語の秘密が厳守され続けた事。

ドク・オクが最初に、ついでエレクトロの登場が予告されマルチヴァースの導入が予告されていた本作であったが、実際ふたを開けてみれば、それどころではない、まさにソニースパイダーマン総集編みたいな一作だった。
というかソニーマーベルのアベンジャーズ?(ちょっと違うか)

アンドリュー・ガーフィールドの登場には私も含めた観客のざわめきが起きるほどの衝撃。ついでトビー・マグワイヤの登場にはもはや声すら上がらず。

情報は基本的にいれない方だが、そこまで積極的にシャットアウトしてた訳でもないのに、ここまでの世間の秘密厳守ぶりに、本当に

お前ら最高かよ。



ただこれだけのお膳立てをしておきながら、大絶賛とまではいかない私はひねくれ者?

大体このストーリー、先のアニメ「スパイダーバース」と一緒じゃないか。
あっちの方が数倍興奮したような気がするが、多分これは本作の主要キャラの多さからくるまとまりの無さが原因だと思う(二時間半はどう考えても長い)。
ドクターストレンジのところに行くまでが第一幕。三人ピーターが揃う所までが第二幕。ラストの戦いが第三幕として、最初はアクションシーンは無し。二幕目はドク・オックとエレクトロ戦、ドクターストレンジ戦とゴブリンの逃走くらいがアクション的には山場。
そしてラストの決戦に至るまで大体がナイトアクションなのだ。
もういい加減、夜にアクションするのやめろ。なぜ昼間にアクションしてはいけないのか。
そもそも第二幕は登場キャラの顔見せがメインで長時間になってしまった感が強すぎて、ストーリー的にはあまり乗れなかった(楽しい、や驚き、はあったんだよ)。

このシリーズは基本、未熟な少年ピーターの挫折と成長の物語として構成されている。第二幕の失敗など若さゆえ、だろう(「坊やだからさ」)。
ずっと前作の成長の代償が大きすぎる気がしていて、それを継いでの本作と言えば、成長に対する代償が二作目の比ではなくあまりにも大き過ぎる、極限まで高められていたのが、観ていて辛すぎた。

製作陣はこのキャストによる続編をすでに予告しているので、あるいはそこである程度救済されるはずだが、さてどうなるか。

常々、スパイダーマンにはあまりMCUには関わらずにいて欲しいとは思ってたんだけど、これはこれでなんか違うような気がしてならない。
こんな作品になったのは、ソニーとディズニーがケンカ別れしそうになって、それじゃソニーはソニーでスパイダーシネマユニバースやってやらあ、っていうのが案外分かりやすい動機なのかもしれないけど。

私はもっと一作で完結したスパイダーマンが観たいんですよ。

ドクター・ストレンジとのやり取り、序盤で次々とあっさり捕まっていくヴィラン、三人ピーターのやり取り(「アベンジャーズっ何それ、バンド?」)とか、ちょっとしたユーモア感は大好き。

ネッドはいい奴なんだけど、ラストのラストで、ピーターとMJの失われた絆を思うエピローグではちょっと邪魔に感じたな。

なんかもうお腹一杯過ぎるの。
ヴィランオールスターにするなら、スパイディとドクターストレンジだけにするとか。三人スパイディなら強力なヴィラン一人(とザコ敵)にするとかさ。

最後に、冒頭に出た盲目の弁護士さん。
あの辺りぐらいまでは、マジで今年ナンバー1作品だと思って観てました。
あれは今後どうするんだろう?

観に行ってもう二週間もたつのになんかモヤモヤ考えてる私です。

世間で意外にも本作にモヤモヤしてる人が案外多いことを知ったのは、映画ライターのてらさわホークさんのYouTube、「BLACKHOLE」における本作のネタバレあり批評でした。
本人の意思に反して次々と「治療」されていくヴィランを称して、主人公のエゴだの、個性の侵害だのルドヴィコ療法だの言われてて、大いに納得したのでありました。

これこそトムホスパイディのオリジンとなった、っていうのが胸熱です。

後、日本のソニー。
吹替版のエンドクレジットの頭でワケわからんアイドル曲フルでかけやがって、あの数分ぶんだけでも金返せと普通に思ったよ。
MCUはラストのラストまで観ないといけないんだから、ラストのオマケを人質にとったみたいなやり方は本当にやめろ。
あれは熱心なファンですら賛否半々だと思うよ。
劇場(2D吹替版)にて。22.01.14
2022#001
タカシ

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