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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのtorakoaのレビュー・感想・評価

3.0
三部作の2作目以降とアメイジング2作は未見。MCUは『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』までは最初から順に観てきてる。という状態で事前情報一切なしに鑑賞。
この素直で愛嬌ある明るいMCUスパイダーマンは好きなので極力色々スルーしようとしてきたが、限界がきたのかもしれない。今回は色々引っかかりがあって鼻につくものが多い。しかも冗長。テンポが悪い。

色々ひどかった中
主演トム・ホランドくんは役柄を演じてる役者ではなくそういう人物に思えてくるナチュラルな演技でとても輝いていた。彼独自と思われる色付け・味付けもあり、他の人がやってたらこうはならなかったろうと初参戦時から思わされ続けたし、身体表現も巧くて全身で表情つけられる俳優で、器用さを持ちながら小器用な感じにならないのもいいし、彼とスパイダーマンはこれ以上ないぐらいの巡り合わせ、多くの人が幸せになれるキャスティングだったと思う。
犬に吠えられて「おおお、びっくりしたー」て日本語で言ってるみたいに聞こえるとこ面白かわいかった。

あとは文句だらけなので好きな人は以下読まないほうがいいと思う。

別シリーズの過去スパイダーマン映画と繋げる試み、MCUの他ヒーロー出して闘わせる等々、やりたいことはわかる。要素やアイディアそのものが面白い(と思える)ことと話や作品が面白いこととはイコールではないと思うのだが、今回はそういった、観客に興味持ってもらえる要素に頼り切ってストーリーはおざなりになった感。そして、しがらみかファン心理でか入れたい要素・削りたくないものが増えて散漫かつ冗長になってしまってもいるのではないか。話の繋ぎ方が粗いというか甘いというか雑というか話運びがまずい感じで、色々取ってつけた感やら浮いてる感やら居心地の悪さがある。何でそうなる?何だそりゃ?で、げんなりさせられていった。書き手に都合よく動かされてるだけみたいな言動だらけで話が流れていく感じ、あまり出来の良くない二次創作読んでるような気分だった。遊び心があんまりいい方向に作用してなかったと思う。

設定やプロット自体に強引というか無理筋なとこがあるのは置いたとしても、ジョーク場面が無駄に長くて本筋の話がぶつ切れの継ぎ接ぎみたいになってるし、わざとらしさ・あざとさみたいなのがにおいまくって滑ってる感じで引いてしまうし、その度に興を削がれ集中力切れるし、そこまでの話の流れちょっと見失ったりで、どんどん盛り下がってしまった。不自然さ・作り物臭さが出過ぎてる。もうちょっとうまく馴染ませられなかったものだろうか。
もしやこの辺は原点回帰というかサム・ライミ版といわれる三部作オマージュなんだろうか。前2作はここまでひどくなかったのに。JKシモンズ関連の挿入も邪魔くさかった。

アクション面も前作と比較するといかにもCGな感じが多かったと思う。ぶち破った壁があまりにも発泡スチロール過ぎたり、床が薄くヤワ過ぎたりも結構な萎え要素だった。インド映画ぽい。
話もアクションもこれまでより錬られてない印象。

安易に便利な力を頼ろうとした主人公が悪いことになってるけど、ちゃんとした説明と確認を怠ったストレンジが悪いだろ。後でどれだけエモーショナルにしようとしてこられても、だったら最初からやっとけとしか思えず。独善的でいけ好かない野郎なのは最初からだったと思うので、幾通りにも未来をシミュレーションし予見できる力を得ても(過去形か)人格なんてそう変わらないってことだな。素晴らしい能力を持っていることと人間性とは全く関係ないしな。洞察力の有無も関連ないと。ストレンジこそ「大いなる力には大きな責任が伴う」て言い聞かせられたほうがいいんじゃないのか。

実際は主人公の若さを都合よく利用して話を動かそうとしすぎてる制作陣が悪い。MCUスパイダーマンは子供である。と3作(+アベンジャーズ)通してこれでもかこれでもかと強調してきている訳で、であるならストレンジは「大人」である訳だし、大学関係者も「大人」として描写されるべきかと思うのだが、これはどうなんだろうか。若いから、コメディだから、アクションだから、MCUだから、で色々甘く考えてるのが見える。アイディアそのものは悪くはなくとも整合性とか考えて練られてないと茶番じみてしまうんだよ。

前2作は派手なアクションかましまくってきたヒーロー達の影にスポットを当てたみたいな、悪役が悪役になるきっかけの設定がよかったと思っていたので、今回は色々残念だった。前作でスタークから卒業したってことなのかなとは思えど、過去スパイダーマンと過去悪役を出すという派手設定に逃げただけという感じも否めない。もうちょっと丁寧に話を紡いでほしかった。
初見からいけ好かなかったメイ伯母さんは今回パワーアップしていたな……いい意味でなく。
主人公の最後の選択だけはよかったと思うので、多少不快感は緩和されたけど、なんだかなあ。

ヴェノム2作目を観てないせいか、ブラック・ウィドウ以降のMCU観てないせいか(ドラマシリーズ類も勿論観てない)、取ってつけた感満載のおまけが楽しくなかったし、MCU恒例の次作へのちょっとした引きのはずが普通に予告編みたいだったのも興醒めだった。本編含め全体的に冗長。旧作ファンへのサービスらしきとこ他、もうちょっとタイトにできたろう。個人的にはファンサービスてこういうことじゃないと思うんだけどな。話に集中させ引き込む力が落ちていると思った。話の好悪はともかく色々もうちょっと練ってあったと思うんだけどな。

三部作とアメイジング、MCUシビルウォーからのスパイダーマン出演作を順番に全部観た上で再視聴したら
キャラがブレて別人化してないか?と思ったとこあった。特にリザードとフラッシュ。二人の会話も違和感あった。4コマ漫画のネタならありだと思うけどさー。書き手の都合で喋らせて動かしてるだけのキャラが散見する、出来の良くないラノベっぽさ・二次創作っぽさがあって厭味が漂いまくってる話だった。出しゃいいってもんじゃない。
あとJKシモンズ出さないほうがよかったとより強く思った。

吹替、英語字幕・バリアフリー字幕入。バリアフリー字幕は吹替とほぼ同内容、文字数多めで読み切れないこともあるものの通常字幕より理解しやすいので、あると本当に助かる。レンタル版BDにちょこっと映像特典が入ってる。『マルチバースの視覚効果』8分弱。
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